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岡山大大学院、就実大グループ 脳梗塞に新治療薬 組織死滅を抑制 ラットで確認

西堀正洋教授

森秀治教授

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授(薬理学)と、就実大薬学部の森秀治教授(応用薬学)の研究グループは十九日までに、脳血管が詰まって起こる脳梗塞(こうそく)の新しい治療薬を開発した。ラットの実験で、脳組織の死滅部分は投薬しなかった場合の10%にとどまり、運動機能への悪影響も見られないことを確認した。

 脳梗塞は酸素やブドウ糖が供給されなくなり、早期治療で組織の損傷をいかに少なくするかが課題。西堀教授によると、新治療薬は実用化・研究中の薬品を使った場合の死滅割合(70―50%)より少なく、血栓を溶かす別タイプの治療薬「tPA」の投与限界である三時間を超えても効く可能性がある。

 研究グループは、脳梗塞で壊(え)死した組織から放出され、炎症や腫れを引き起こす有害なタンパク質「HMGB1」に着目。このタンパク質の働きを抑える抗体を投与すれば、梗塞の進行を防ぐことが可能と考えた。

 実験では、脳梗塞にしたラットに対し、発症から二時間後と十四時間後に二回注射。二十四時間後の梗塞範囲は、注射しなかった脳梗塞ラットの10%だった。また別のラットに注射して回転棒での歩行時間を計ると、丸一日で発症前と同じレベルに戻った。

 研究結果は、米国の基礎医学系専門誌ファセブ・ジャーナル(電子版)に発表した。西堀教授は「実用化に向けて、他の動物で安全性と有効性を確かめることが課題。今後五年程度で臨床試験を開始できれば」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年07月20日 更新)

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