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南海トラフ想定 高知、徳島支援へ AMDA提唱のプロジェクト進む

徳島県海陽町の町立海南病院であった広域訓練に参加したAMDAスタッフら=9月1日(AMDA提供)

 近い将来の発生が懸念される南海トラフ巨大地震で、甚大な被害が想定される高知、徳島県の8市町を岡山、香川県の自治体や医療機関などが支援するプロジェクトが進んでいる。国際医療ボランティアAMDA(本部・岡山市北区伊福町)が提唱し、総社、備前市、和気町などが参加。自治体の枠を超え、大地震に備える取り組みで、会合や訓練などを通じ、相互理解と連携を深めている。

 南海トラフ巨大地震が起こった際、最大で高さ34・4メートルの津波が予想される高知県黒潮町。町の防災担当者は「ここは日本一危険な町。緊急医療支援で実績を持つAMDAの協力は非常に心強い。知識と経験を吸収して支援を受けるための『受援力』を高めたい」と話す。

 プロジェクトは災害の発生時、迅速に行動できる仕組みを整えるのが目的。AMDAがコーディネーター役となり、避難所を開設する自治体と、支援に駆け付ける医療機関、物資の提供や輸送などを担う企業とを結び付ける。避難所では1カ月間、医療活動を行う。

 計画によると、支援先は徳島県の2市3町と高知県の2市1町に開設される計10カ所の避難所。各避難所には、医師らで構成する1チーム3人以上の医療チームを1週間に3チームずつ派遣する。避難所生活の人たちのため、食料や医薬品なども定期的に輸送する。

 AMDAなど派遣側の拠点は、大規模災害の被災地支援条例がある総社市に設定。四国側の中継拠点を丸亀市が担う。備前市と和気町は人材派遣や物資提供で協力する。

 AMDAは2011年以降、県内外の自治体や医療機関、企業などと計28件の協定を結び、巨大地震が発生した際に協力してもらう態勢を築いてきた。昨年6月からは会合と広域訓練を重ね、各避難所への派遣チーム割り当て案も作成。案に基づき、支援する側とされる側の相互訪問も始めた。

 医療チームを黒潮町などに派遣する川崎学園(倉敷市松島)の川崎誠治理事長は「中四国で唯一の私立医大を持つ学園として地域医療、災害医療に貢献する責務がある。災害医療についての系統的な教育システムづくりにもつなげたい」と話す。

 AMDAは派遣スタッフの宿泊費や食費などとして1億円以上の経費を見込み、国内外からの募金で賄うため、英語、フランス語、中国語のホームページを作成する予定。今後、派遣時に使う備蓄品の確保などを急ぐとともに「支援先の住民にも訓練などに参加してもらい、プロジェクトの質を向上させたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年11月07日 更新)

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