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看護師出向させ在宅医療サポート 川崎医科大センターが新事業

患者宅の訪問を終え、事務作業をする高橋さん(中央)と丸谷さん(右)。赤瀬さん(左)の下で訪問看護に取り組んでいる

 川崎医科大総合医療センター(岡山市北区中山下)が、在宅医療を支える訪問看護ステーションに看護師を出向させる新しい事業をスタートさせた。「病院から在宅へ」をキーワードに国が在宅医療の普及を急ピッチで進める中、在宅への復帰支援の態勢強化、地域の訪問看護師不足の解消などが狙い。県訪問看護ステーション連絡協議会によると、県内の病院では初の試みという。

 「治療が中心となる『病院医療』と生活を重視する『在宅医療』は視点が異なり、とても勉強になる」。9月から訪問看護ステーション「晴(はる)」(同表町)に出向する看護師、高橋洋子さん(42)と丸谷典子さん(34)が口をそろえる。

 訪問看護は家庭や地域で患者が療養できるようケアする医療・介護サービスの一つ。同医療センターは9月に出向事業を始め、対象とする看護師2人を1~2年間出向させ、顔触れを変えながら少なくとも5年間継続する方針だ。日本看護協会が同様の事業への補助制度を設けており、対象となる3カ月は制度を活用する。

 出向事業は同医療センターの新(あたらし)美保恵看護部長が企画した。国が誘導する在院日数の短縮化により、医療依存度が高いまま退院する患者が増え、円滑な在宅復帰支援や在宅医療との連携の重要性が高まる現状を踏まえ、地域の在宅現場を知る病院看護師の育成が不可欠と判断。センターに近い「晴」に打診し、快諾を得た。

 受け入れ側のメリットも大きい。超高齢社会の進展で訪問看護に対するニーズが高まる一方、県内の訪問看護師は、2014年末時点で全看護師の3%にも満たない。晴の赤瀬佳代代表は「待遇面や患者宅を単独訪問する不安などから、業界は慢性的な人手不足。出向事業は地域の在宅医療の充実につながる」と歓迎する。

 出向者は在宅医療で得た経験を院内で定期的に報告し、他の看護師にも還元する予定。新看護部長は「在宅医療を知る看護師の存在は、退院前の患者や家族の不安の軽減にも役立つ。病院と地域の在宅現場との結び付きを深めていきたい」と期待している。

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年12月03日 更新)

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