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岡山大医学部地域枠1期生に聞く 2人が研修終え病院勤務スタート

地域枠1期生として決意を語る山本医師(左)と地域医療への思いを話す木浦医師

 過疎地などで地域医療を担う医師の育成を目指し、岡山県と岡山大が同大医学部に導入した「地域枠」の1期生2人が岡山市内の総合病院での初期研修を終え、今月から高梁中央病院(高梁市南町)と金田病院(真庭市西原)で地域勤務をスタートさせた。地域医療への思いや抱負、地域枠制度の在り方などを聞いた。

高梁中央病院の木浦賢彦医師(27)

 大学1年時から中山間地で体験実習を重ね、人手不足で忙しい地域医療の実情を垣間見た。専門にこだわらず、1人で一通りの対応ができなければならない。独り立ちして地域医療を担う覚悟を早くから持てるのは他の若手と違う点だと思う。

 専門を深く掘り下げたい人には指導医や症例数が少ない地域勤務は向かないだろう。私は、さまざまな疾患に通じた「総合診療」のできる内科医を目指したい。主治医として任される領域が広い地域勤務は、知識や技術を身に付ける上でメリットが大きいと考えている。

 患者との距離の近さも魅力だ。うまく地域に溶け込んでいきたい。長年打ち込んできた趣味の囲碁が高齢者とのコミュニケーションに役立てばうれしい。

 地域枠制度で若い医師が増えれば、ベテランも活気づき、地域の活性化につながる。人材がある程度そろい、1人当たりの負担解消が図れれば医師の定着率も上がるはず。私自身も地域にしっかり寄り添い、貪欲に何でも吸収していきたい。

真庭・金田病院の山本高史医師(26)

 県外で働くつもりがなく、母の実家が中山間地で地域医療が比較的身近だったため、地域枠を志望した。県南であれば専門的な医療もすぐ受けられるが、例えば新見市では車で1時間半かかる場合がある。同じ医療費を払うのに地域格差があるのはおかしいと思う。

 地域勤務は期待と不安が半々。県南の総合病院は夜間でも当番の専門医に確認できるが、人手や設備が乏しい地域での単身の当直勤務は責任が重い。一方で検査に頼らず聴診器1本で患者を満足させるのは医師冥利(みょうり)に尽き、自分がどれだけ成長できるのか楽しみだ。

 地域枠は過疎地でマンパワーを一定期間確保するのに有効な制度だ。だが義務年限を超えて定着するかは不透明な部分がある。枠に限らず、若い医師が地域医療の魅力を共有でき、協力し合える体制整備が大切だと思う。

 大学での地域医療実習などを通じ地域枠への期待や注目度の高さを痛感する。1期生として後進の模範となれるよう地域に信頼される医師を目指したい。

 地域枠 県と岡山大が2009年度導入し、毎年数人が「地域枠」として医学部に入学。過疎地などでの医師不足解消が狙いで、卒業後、地域での勤務を義務付ける代わりに奨学金を出す。奨学金は卒業までの6年間、1人当たり年240万円。県指定の医療機関で9年勤務した場合は返還を免除される。9年のうち研修期間の4年(初期、後期各2年)は都市部での勤務が認められており、地域勤務は少なくとも5年になる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年04月24日 更新)

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