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胃荒れない鎮痛化合物 岡山大助教ら開発  特定酵素の働き抑制

加来田博貴助教

 岡山大大学院の加来田博貴助教(創薬化学)らの研究グループは、胃の荒れない鎮痛化合物を開発し、動物実験で効果を確認したことを明らかにした。アスピリンなど既存の消炎鎮痛剤は胃の炎症を起こす恐れがあることから、副作用のない鎮痛剤としての実用化が期待される。

 関節痛や生理痛などの痛みは、体内でシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素が脂肪酸の一種・アラキドン酸と結合し、痛みの伝達にかかわる物質プロスタグランジン(PG)を作り出すことで起きる。

 このPGは胃の粘膜を保護する働きを持つ。アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド系鎮痛剤はCOXの働きを抑えるため痛みはなくなるが、一方で胃の粘膜保護も除かれ、胃炎や胃潰(かい)瘍(よう)などを引き起こすという難点があるとされる。

 COXは二種類あることが知られ、胃の障害は、胃粘膜上に主に存在するCOX―1の働きを抑えることが原因と一般的に考えられてきた。

 これに対し、COX―1の働きを抑えても、もう一方のCOX―2が増えて胃の障害を起こさないという論文が新たに発表され、加来田助教らは着目。市販の試薬を使い、COX―1の働きだけを抑制する化合物を開発した。

 この化合物をマウスに与えて酢酸を注射したところ、アスピリンを投与した場合に比べて痛みによる運動の回数が少なくなるなどの鎮痛効果を確認。ラットに投与した際、胃潰瘍はほとんど見られなかった。この化合物は現在、国際特許を申請中。

 鶏の有精卵を使った実験では、がんの成長を示す血管新生を抑える作用も見られたといい、加来田助教は「さらに研究を進め、がんの緩和ケアや生理痛などに有効な鎮痛剤としての活用を目指したい」としている。




新しい道開いた

 橋本祐一・東京大分子細胞生物学研究所教授(医薬化学)の話 末期がんなど痛み止めを必要とする患者のための新しい鎮痛剤を開発する上で、新しい道を開いた研究として評価できる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年01月18日 更新)

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