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岡山県内の福祉有償運送 新規登録が大幅減  法改正で規制強化 難しい人件費工面

法改正以降、新規登録が伸び悩んでいる福祉有償運送=岡山市内

岡山県内の福祉有償運送事業者数(グラフ)

 要介護者や身体障害者ら移動に制約がある人を特定非営利活動法人(NPO法人)などが自家用車で送迎する「福祉有償運送」で、岡山県内の新規登録が大幅に減っている。二〇〇六年十月の改正道路運送法で制度化されて以降、制度化による規制強化が引き金とみられる。根底には人件費さえも賄えないという運営面の厳しさもあるようだ。

 県内では、登録制度が始まった〇三年度以降、年々十数事業者の登録があり、〇六年度末に六十事業者となった。しかし、法改正以降、昨年末までの一年余りの間の登録は四事業者にとどまった。二年間で切れる許可期限を更新しなかった事業者もあり、五十九事業者に減った。

 改正法は、特例として認めていた福祉有償運送を制度化する代わりに安全面を重視。国の認定機関での安全講習受講や、運行管理責任者の配置などを義務付けた。

 しかし、福祉有償運送は「営利目的でない」というのが大原則。利用者に請求できるのは、ガソリン代など実費の範囲内で、タクシー運賃の二分の一を超えない料金設定が求められており、人件費を工面するのは難しいとする事業者も多い。

 県内事業者らでつくる「移動ネットおかやま」(事務局・新見市)は「ボランティアとしてやっているのに法改正で営利団体並みの規制が設けられ、気軽にできなくなった」と、新規登録が伸び悩む背景を説明する。

 岡山市内のある事業者は「利益が出ないことは分かっていたが、休みなく働いても人件費を賄えない現実に戸惑っている。ほかの事業を展開する上での付属と考えなければ、経営は成り立たない」とし、今後、更新をしない事業者も増えるのではないかと心配する。

 別の事業者も「法にのっとらない全くのボランティア送迎が周囲で増えており、かえって安全面で心配だ。このままでは国の方針に逆行することになりかねない」と、法改正に疑問を呈する。

 ただ、事業への参入が伸び悩むのとは裏腹に、利用ニーズは高い。県内五十九事業者で、会員約四千人の需要に対応しているが、「現状でも足りず、入りたいとの要望を断っている状態」(移動ネットおかやま)。人口比率などから潜在的には約八万人の需要があるとも言われている。

 県福祉有償運送運営協議会長を務める谷口守岡山大教授は「福祉有償運送は、一人での移動が難しい人が気軽に外出するために必要」とした上で、「改正法は運輸行政の立場から安全面を重視しており、福祉行政の視点が足らない。この事業がなければ、家に閉じこもらざるを得ない人がいるという現状を理解し、法に生かすべきだ」と指摘する。

ズーム

 福祉有償運送 特定非営利活動法人や社会福祉法人が、利益を取らない実費の範囲内で請け負う移動サービス。公共交通機関による移動に困難な事情がある場合、地方自治体が主宰する運営協議会で合意が得られた法人に事業が認められる。各事業者の会員にならなければ利用できないが、病院などの送迎以外にも、レジャーなどで利用できる。岡山県では、2003年度の規制緩和による「福祉移送特区」導入で、全国に先駆けてスタート。翌年からは、道路運送法の例外規定を使った許可基準が設けられ、全国に広がった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年02月01日 更新)

タグ: 介護福祉

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