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江草さん監修介護本が上海で出版 初心者向け「高齢者の尊厳」理念

故江草安彦さんが監修した中国の初心者介護職向けテキスト

江草安彦さん

 社会福祉法人旭川荘(岡山市北区祇園)の理事長を務めたの故江草安彦さん(2015年3月死去)が監修した初心者介護職向けの中国語版テキスト「介護基礎講座」が13日、中国・上海市で出版される。高齢化に伴う介護需要を見据え、江草さんは高齢者の人権確立など上海市の福祉分野での人材育成に長年尽力してきた。同市では年内にも介護保険制度が試行される予定で、遺志がこもった“手引書”として活用が期待される。

 旭川荘は1985年に上海市の視察団を受け入れたのを機に同市との交流をスタートさせた。2005年からは国際協力機構(JICA)の支援事業の一環で介護職らの養成事業を手掛けた。同事業は日中関係の冷え込みを背景に9年間で中止されたが、14年2月、上海市民政局から「新しい交流を続けたい」と要望があり、介護職の資質向上にと江草さんがテキストの編集を指示した。

 A5判198ページ。7章構成で、日本の介護保険制度や介護職員養成の仕組みをまとめた「日本の社会福祉制度等」▽衣類の着脱や移動、排せつの介助方法を具体的に示した「生活支援・介護技術」▽認知症についてまとめた「認知症介護の理解」―などからなる。川崎医療福祉大の小池将文教授ら専門家17人が執筆し、初心者も理解しやすいよう旭川荘職員3人がイラストを添えた。

 江草さんは「高齢者の尊厳を大切にする介護の理念や概要が分かる内容に」などと亡くなる数カ月前まで執筆陣への助言を続け、原稿は全て目を通した。冒頭の「はじめに」は自ら筆を執り「一人一人異なる高齢者が生きがいを感じることができるように総合的な介護サービスを構築していかなければならない」と指摘し、専門職の人材育成、介護の理念や知識、技術の体系的養成の大切さを説いた。

 旭川荘日中医療福祉研修センター(岡山市北区祇園)によると、テキストの編集は15年3月、江草さんが亡くなった後に完了。著作権の手続きなどを経て出版の運びとなった。共同監修した元上海市民政局長の馬伊里氏らが私費出版する形で3千部を製作した。13日には現地で出版記念式があり、旭川荘の末光茂理事長と馬氏らが祝う。

 同センターの小幡篤志所長は「高齢者の人権の確立を目指す介護サービスの理念と技術を伝えようとした江草先生の思いが形になった。良い人材が育つ素地になれば」と願う。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2017年07月13日 更新)

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