文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • 脳卒中 専門科が増加 岡山県内病院 有効薬普及 社会復帰1.5倍 迅速治療へ体制

脳卒中 専門科が増加 岡山県内病院 有効薬普及 社会復帰1.5倍 迅速治療へ体制

脳梗塞の救急患者にtPAを投与する川崎医大病院の医師ら(同病院提供)

 日本人の死因でがん、心臓病に次いで多い脳卒中治療の専門科が、岡山県内の病院で増えている。脳梗塞(こうそく)に有効な治療薬「tPA」の普及により、高度な専門性や緊急時の連携が必要となっているため。「治らない病気」とされてきた脳卒中の治療体制が変わりつつある。

 岡山赤十字病院(岡山市青江)は四月一日から「脳卒中科」を新設。専門医二人が救急と週二日の外来診療を実施、脳梗塞で血管に詰まった血栓を溶かす薬tPAの投与などを行う。

 同病院の救急患者のうち脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血、脳内出血)は一割を占めるが、「脳神経外科や神経内科など複数科に治療が分かれ、専門科の必要性を感じていた」という。

 県内の専門科は、川崎医大病院(倉敷市松島)が二〇〇四年に神経内科脳卒中部門として開設したのが最初。〇六年四月には脳卒中科として独立した。倉敷中央病院(同市美和)も〇五年、脳神経外科に神経内科の医師を加え、脳卒中科を設けた。

 背景には、脳卒中患者の六割を占める脳梗塞の治療で高い効果が見込めるtPAが、〇五年に健康保険に適用されたことがある。川崎医大病院ではtPAを投与した場合、大きな後遺症がなく社会復帰した割合が38%と、投与しない場合に比べて約一・五倍高かった。

 ただし、tPAは脳出血を招く恐れがあるため、投与は発症三時間以内に限られ、血圧や重症度により対象患者も絞られる。緊急性が高いことから専門医はもちろん、病院内の体制や救急隊との連携などが求められ、実施している病院は少ない。

 「症状を止めた後はリハビリしかないという昔の治療から、積極的に治すという意識を浸透させる必要がある」と同大の木村和美教授は言う。

 同大は倉敷市消防局と協議し、意識水準やまひの状態など五項目を点数化する脳卒中チェック表を救急隊に配布。その結果と発症時間を病院に連絡してもらい、迅速な治療へつなげている。

 岡山赤十字病院で脳卒中治療を担当する井上剛医師は「急性期だけでなく、退院後まで見据えてリハビリや栄養部門、ソーシャルワーカーなどと連携したチーム医療が大切。今後も増える病気だけに、専門科として手厚い体制を築きたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年03月24日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ