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災害時派遣の医療チーム DMAT編成進む 岡山県内5病院41人登録 運用基準あいまい 隊員ら不安募る

自衛隊のヘリを使って患者の搬送訓練を行うDMAT隊員=岡山赤十字病院提供

 地震や列車事故などの災害時に派遣される救急医療チーム「DMAT(ディーマット)」の編成が岡山県内でも進んでいる。阪神大震災の「避けられた死」を教訓に、専門性と機動力を高めるため国が設置。県内で5病院の41人が登録しているが、二次災害時の補償などに関して派遣要請する県と病院間の協定はなく、あいまいな運用基準に隊員らの不安は募っている。

 DMATは、阪神大震災で多くの負傷者が迅速な治療を受けられず亡くなったことを機に、厚生労働省が二〇〇五年から養成を始めた。全国で三百五施設の約二千六百人が登録。県内では災害時の派遣はまだないが、岡山赤十字、岡山済生会、川崎医大、倉敷中央、津山中央の五病院が計八チームを編成している。

 県の要請を受け、発生から四十八時間以内に出動。他県に出向くこともあり、多数の負傷者から治療の優先順位を選別する「トリアージ」や応急処置、搬送手配などを行う。一チーム当たり医師、看護師、事務職の五人体制で、登録のための専門講習(四日間)では、災害発生後のシミュレーション、ヘリや飛行機を使った搬送、通信訓練などを受ける。

 「地域や病院で異なる災害医療のやり方を『標準化』しているのが大きい」と岡山赤十字病院の石井史子医師。どういう処置をどんな手順で行うか統一され、「全国のチームが現場で顔を合わせてもスムーズに連携できる」という。

 ただ、運用基準について、厚労省は「詳しい内容は都道府県が定めるべき」と病院間との協定を結ぶよう活動要領に定めているが、締結は東京、福岡など十件しかないのが実情だ。昨年の新潟県中越沖地震でもDMATの派遣を見送る医療機関があった。

 県内でも、どの程度の災害で出動し、活動費用や、隊員が被災地で負傷した時の補償はどこが負担するのかなど、枠組みやルールが整備されていない。多くの病院は「派遣要請があれば出動する」というが、「自主的な取り組み」となる可能性が高く、不安は常につきまとう。

 川崎医大病院の石原諭医師も「被災地からの正式な派遣要請がないような早い段階で動く必要があるだけに、県が全面的にバックアップするという姿勢がないと出動しづらい」と訴える。

 協定が進まない理由として、県施設指導課は「広域活動なのに各県共通のガイドラインがない」と指摘。「派遣を要請する災害の規模、被災県と派遣した県の間での費用負担のあり方など、いろいろ調整が必要」と話す。

 こうした中、厚労省は活動要領を新年度に見直し、初動態勢で一定基準を設ける計画。DMATの協定を結んだ県の活動に対しても、災害救助法が適用されるかどうかにかかわらず、必要経費を負担する―といった補助制度を始め、「滞っている協定の締結を前進させたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年04月07日 更新)

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