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前立腺がん、新遺伝子治療を開始 岡山大病院 国内初手法 免疫を活性化

インターロイキン12を使った遺伝子治療(図)

 岡山大病院(岡山市鹿田町)は十三日、前立腺がんの六十代男性患者=中国地方在住=を対象に、新たな遺伝子治療を始めた。体内物質「インターロイキン12(IL12)」を利用して免疫を活性化させる国内初の手法で、今後約一年かけ二十一人で効果を検証する。

 治療は泌尿器科が担当。IL12をつくる遺伝子を組み込んだ「アデノウイルスベクター液」を病巣部の二カ所に計一ミリリットル注射した。治療は午前中に行い、十五分で終了。四週間ごとに一回注射し、計三回終わった時点で効果を調べる。

 男性は二〇〇三年に発症。骨転移があり、ホルモン療法を受けていたが悪化していた。IL12注入後、発熱など副作用は現れていないという。

 同科の公文裕巳教授は「治療のデータをオープンにしながら、安全性と効果を確かめたい」と話している。

 IL12は周辺のリンパ球を活性化してがん細胞を攻撃させる。血流に乗って全身をめぐり、骨などに転移したがん細胞にも効くとされる。マウス実験では七匹で前立腺がんの腫瘍(しゅよう)の大きさが平均60%縮小している。

 岡山大の遺伝子治療は、別の手法による前立腺がんと肺がんで既に行い、三件目。今回の実施計画は今年二月に国から承認された。


ズーム

 遺伝子治療 「体の設計図」である遺伝子の変異や欠損で起きる病気に対して、体外から遺伝子を薬のように注入して特定の機能を持たせるなどして治療する手法。一九九〇年に米国で初めて行われた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年05月14日 更新)

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