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苦痛少なく小腸検査 カプセル内視鏡体験 長さ2.5センチ、直径1センチゴクッと一飲み

撮影した画像をチェックする山下医長。ひだまで確認でき、実に鮮明だ

カプセル内視鏡を飲み込む記者。画像は腰に装着した重さ約1キロのデータレコーダーに無線で送られる

 カメラやメスを搭載した超小型ロボットが体内を駆け巡り、次々と病気を発見し治療していく―。そんな近未来医療の到来を予感させる医療機器として、注目されているのが「カプセル内視鏡」だ。今のところ、実用化できているのは小腸検査のみだが、昨年十月からは保険適用され、苦痛の少ない検査が可能になった。最新医療を体験すべく、カプセルを飲み込んでみた。

 カプセル内視鏡は、プラスチック製で小腸撮影用。長さ約二・五センチ、直径約一センチ、重さ約三グラム。

 飲み込むと、食べ物と同じように胃、小腸、大腸を通過するが、その間に先端に搭載しているLED(発光ダイオード)ライトと小型カメラで一秒間に二枚ずつ、計約五万枚の写真を撮影する。写真のデータは、腰に装着した重さ約一キロのデータレコーダーに無線で送信する仕組みだ。

 検査を受けた国立病院機構岡山医療センター(岡山市田益)は昨年八月から導入し、既に約五十人の検査で活用している。下血や血が混じった黒っぽい便など、消化管出血の検査に威力を発揮するという。

 検査前日の夕食は午後七時までにすませ、同十時以降は水分摂取もできない。当日朝も絶飲食で臨んだ。

 担当は同センター消化器科の山下晴弘医長。看護師が箱から取り出したカプセルは、薬の錠剤より少し大きく感じたが、「大丈夫。みなさんゴクッと一飲みですよ」と山下医長。「小腸は長く曲がりくねっているので、これまでの内視鏡では検査が難しく“暗黒の臓器”と呼ばれている。このカプセルだと、鮮明な画像で詳しくチェックできます」

 水分は飲み込んで二時間後から、食事は四時間後からOK。激しい運動をしなければ病院から出ることも可能なようだ。私はそのまま会社に出勤し、いつも通り業務。午後五時、再び病院へ。データレコーダーを取り外してもらい検査は無事終了した。カプセルは翌朝、便と一緒に無事排出。後は不燃ごみとして処理すればよい。

 がんや潰瘍(かいよう)を早期に見つける方法としては「胃カメラ」などが広く知られているが、飲むのが苦痛な人も少なくない。その点、カプセル内視鏡は小腸に限られているとはいえ、患者の身体的負担が軽いのが最大の利点だ。

 医療機器メーカーは現在、食道や大腸での検査を目的としたカプセル内視鏡も開発中で、ますます用途は広がる見通し。現状ではカプセルの動きを外部からコントロールできないなど、技術的な課題もあるが、世界の企業や大学では、病巣にたどり着いたら積んでいた薬を放出したり、搭載したレーザーで病変部を焼き切る“究極のカプセル”製作も進行中だという。

 私が受けた小腸検査は、保険が適用されても自己負担額が約三万円と少し高価に感じた。だが、山下医長は「(同センターでは)検査を実施した人の六割以上に何らかの異常を見つけることができた。体の負担は軽いので、今後も積極的に活用したい」と話す。

 一週間後、画像の解析を終えた山下医長とパソコン画面でチェック。ピンク色で“ひだ”まで見える小腸の鮮明な画像に目を見張った。「特に異常はありません。きれいな小腸ですよ」との診断結果に、ほっと胸をなで下ろした。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年06月07日 更新)

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