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幻肢痛治療にバーチャル活用 岡山大病院 脳調べ原因解明も目指す

パソコン画面上のイメージから痛みを緩和するバーチャル治療

 事故などで切断し、ないはずの手足が激しく痛むように感じる「幻肢痛(げんしつう)」など原因不明の痛みを対象に、岡山大病院(岡山市鹿田町)は、バーチャルリアリティー(仮想現実)を活用した治療を始めた。痛む個所が正常に動いているように“錯覚”を起こさせる方法。脳の動きも併せて調べ、痛みの原因解明や治療法の確立を目指す。

 間仕切りされた箱の中のオレンジをつかみ、別の場所へ移動させる。女性(60)がグローブをはめた左手を動かすと、パソコン画面で逆の右手が連動する。

 女性は食品会社で機械に挟まれ、右の手首から先を切断。その後、ないはずの右手が張れて割れるような激痛に襲われた。岡山大病院麻酔科蘇生科が取り組むパソコンを使ったバーチャル治療を、昨年十一月から週一回受け、今も痛みはあるが、以前のように眠れないほどではなくなったという。

 バーチャル治療は、鏡に向き合うと体の左右が逆に見える性質を利用した「鏡療法」の応用。「あるはずの手足がないことで脳と体の間の情報伝達にミスマッチが生じて痛みが起きる」との考えのもと、視覚的な面から改善を図る。

 岡山大は鏡療法にゲーム感覚を取り入れようと、昨秋、大阪のコンピューターソフト会社に依頼し、専用ソフトを製作。グローブや腕に付けたセンサーが関節の曲がり方などを感知して画面上で同様の動きをする。

 幻肢痛に加え、骨折などの治療後に痛みが引かない「複合性局所疼痛(とうつう)症候群」(CRPS)の計十人で試したところ、八人で治療効果があった。

 今後は、fMRI(機能的磁気共鳴画像装置)で脳の変化を調べ、痛みの伝わり方を解析。ソフトも同大工学部と共同研究し、映像を二次元から三次元にして音を組み合わせたり、動きに現実感が増すようにする。

 岡山大病院麻酔科蘇生科の佐藤健治助教は「効果の表れ方は人により違うので詳しい検証が必要。痛みの原因が分からず悩んでいる人は潜在的に多いだけに、有効な治療法にしたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年06月15日 更新)

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