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倉敷の14医療機関 「脳卒中連携パス」本格運用 ネットで患者情報共有 治療の迅速化を期待

インターネットで患者情報を記入する鳴海医長=倉敷中央病院

今後の治療計画を示した患者向けの「くらしき脳卒中地域連携パス」

 倉敷市内の十四医療機関が脳卒中の治療で協力するための「くらしき脳卒中地域連携パス」を作成。今月から本格運用をスタートさせている。紹介状など紙媒体でなく、インターネットで医師らが患者情報を共有するのが特徴。治療の迅速化を期待している。

 脳の血管が詰まる脳梗塞(こうそく)と脳出血、くも膜下出血を合わせた脳卒中は治療の経過で医療機関を移るのが一般的。患者は発症直後、急性期病院で専門治療を受け、後遺症があればリハビリ病院で訓練し、退院後は地域の開業医などに再発予防に通う。

 だが、転院時に医師が書く紹介状は情報が不十分だったり、医療機関で病状などの評価基準が異なる課題があった。転院後の患者の様子を知る仕組みもなかったため、二〇〇六年に同市内の医療機関で発足した「くらしき脳卒中地域連携の会」でパスを作成した。

 医師ら医療従事者はID・パスワードと、患者が持つ脳卒中診療連携カードの連携番号と生年月日で患者情報にアクセス。発症時の状況や投薬など治療内容、それによる意識障害や食事、歩行など病状・日常生活動作の変化、リハビリ内容などを閲覧、記入する。

 問題となったのはセキュリティー。作成の中心を担った倉敷中央病院の鳴海治脳神経外科・脳卒中科医長は「IDと患者の匿名化、データの暗号化で三重の対策を施した」と万全を強調する。

 併せて患者向けに、医療機関をまたぐ治療計画を示した小冊子のパスを作成。回復状況に応じ、いつごろ、どこへ転・退院するか基準を示すことで、家族を含めあらかじめ準備できるようにした。

 二月から半年間、試験運用。同病院で急性期治療を受けた患者のうち、軽症などを除く八割の約二百五十人を登録した。うち二百人弱が既に退院。転院先の評価も上々で、本格運用を決めた。

 複数の医療機関が治療を分担する地域連携は国が推進。四月の診療報酬改定で、脳卒中患者を連携医療機関に転院させると報酬が払われる仕組みも導入した。各地の医療機関が同様のパスを作成、岡山県内ではこのほか、岡山医療センターなど岡山市の八医療機関を中心に運用している。ただ、大半は紙で情報をやりとりし、ネットの活用は倉敷と山形の二カ所だけという。

 倉敷中央病院の山形専副院長は「仮に脳卒中を再発してもカードさえあれば迅速に治療できる。今後は連携医療機関を広げるのが課題」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年08月02日 更新)

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