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アスベスト肺がん 生存期間わずか7ヵ月 岡山の研究機関調査

 アスベスト(石綿)による肺がんは、診断後の生存期間が7カ月余りにとどまる上、潜伏期間は47年にも及ぶことが、岡山労災病院(岡山市築港緑町)内の「アスベスト関連疾患研究センター」による初の全国調査で分かった。 

 石綿が主な原因とされるがん「中皮腫」と比べても、生存期間が短く潜伏期間が長い傾向が浮上。「石綿肺がん」の発見後の治療や原因特定の難しさが、あらためて裏付けられた。

 調査は、石綿肺がん患者135人を対象に実施。平均値より実態を反映しやすい「中央値」を算出した結果、生存期間は7・7カ月で、別の研究データによる中皮腫(10カ月)より短かった。

 初めて石綿を吸ってから発症までの潜伏期間は18―71年で、中央値は46・5年。潜伏期間が長いとされる中皮腫(43年)を上回った。

 さらに、肺が線維化するじん肺「石綿肺」を合併する率(34・6%)は、中皮腫の患者(4・3%)より大幅に高く、石綿を大量に吸ったとみられる患者の割合が高かった。

 職種別では、造船31人、建設26人、石綿製品製造、断熱・保温作業、配管作業が各13人など。ヘビースモーカーが8割余りを占め、たばこが石綿肺がんの発生率を高めるとする海外の報告に沿った結果となった。

 石綿は1970―80年代に大量に使われており、潜伏期間を考えれば肺がんの発症者は今後増えるとみられる。初期段階に外科手術で取り除けば生存率が大幅に高まることから、同センター主任研究者の岸本卓巳・同病院副院長は「早期発見・診断により、手術で治せる症例を増やしていく必要がある」と指摘。「救済漏れを防ぐため、医師の側にも患者から職歴を入念に聞き取ったり、石綿を吸った指標となる所見を見落とさない意識が求められる」としている。


 アスベスト肺がん調査 独立行政法人・労働者健康福祉機構(川崎市)が設置しているアスベスト関連疾患研究センターが、全国18の労災病院を通じ実施。2000年から今年1月までに石綿肺がんで労災認定された患者を中心に、135人(診断時50―90歳)のCT(コンピューター断層撮影)やレントゲン、病理組織を分析した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年09月01日 更新)

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