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乳がん患者のQOL向上へ 岡山大病院センター 切除から再建、複数科連携 退院後見据え治療

合同会議で情報交換する乳腺・内分泌外科や形成外科のスタッフ=岡山大病院

 岡山大病院(岡山市鹿田町)が5月に開設した「乳がん治療・再建センター」が実績を挙げている。複数の診療科が連携し、乳房の切除から失った胸の再建まで一貫して治療する国内の大学病院では初のシステムで、8月までに治療を受けた15人全員の手術に成功。退院後の日常生活まで見据えたチーム医療により、患者のQOL(生活の質)向上に貢献している。

 「もう一度、舞台に立てる」。同センターが正式に発足する直前の4月下旬、右の乳房切除と再建手術を同時に受けた同市の女性(54)は喜ぶ。

 右胸がないままのドレス姿では人目が気になり、趣味のジャズダンスを楽しめない。多くの医療機関は再建手術でシリコンを埋め込むため、中高年には不釣り合いな若々しい乳房になり、耐久性の問題から再手術が必要な場合もある。

 だが、女性は自身の皮膚や脂肪で乳房を作る手術法で再建し、ほぼ元通りの胸を手に入れた。高度な技術がいるため国内で数施設しかできないという。

 乳腺・内分泌、形成の両外科など診療科の枠を超えたチーム医療がもたらした成果。形成外科の木股敬裕教授は「両診療科で頻繁に開く合同会議により、切除する乳房や皮膚の量など再建に必要な情報を詳細に把握でき、患者が満足できる年相応の胸に作り直せる」と説明する。

 さらに、以前は両外科で別々に手術を受けるため2度の入院が必要だったが、切除と再建を同時に行うため入院は1度きり。2度の手術で2週間以上だった入院日数は8―10日に短縮され、患者の負担も軽減された。

 同センターのもう一つの特長が、患者本位の一貫治療。術後は肩や腕に生じる運動障害を理学療法士がケアし、退院後も自宅で可能なリハビリを助言する。岡山県南部に住む30代の女性患者は「リハビリのおかげで生活に支障がないほど回復した」と笑顔を見せる。

 乳がんは年間約4万人が発症し、女性のがんで最多を占める。同県内でも2007年の女性死者(136人)は10年前(92人)の約1・5倍。県は検診の普及に努めるが、06年度の受診率は9・3%にとどまり、全国平均(12・9%)を下回っている。「もっと早く受診していれば…。自分だけは患わない、と思わないで」と同センターで治療した女性らは訴える。

 一方、課題もある。各診療科の日程調整などから現状では手術は週に1人が限度。中四国、近畿地方から患者が訪れ、約1カ月先まで予約で埋まった状態だ。

 土井原博義・同センター長は「より多くの手術ができる体制を整え、患者のメンタルケアまで含めた治療の充実も図り、中四国の拠点病院を目指す」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年09月05日 更新)

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