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抗体とiPS細胞で機能回復顕著 岡山大院教授らマウス実験で確認

西堀正洋教授

 脊髄を損傷した直後のマウスに特定の抗体を投与し、その後にヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った神経のもととなる細胞(神経幹細胞)を移植すると、高い運動機能回復効果があったと、岡山大大学院の西堀正洋教授(薬理学)らの研究グループが8日、米科学誌ステムセルズ電子版に発表した。

 九州大大学院の中島欽一教授(神経科学)との共同研究。人為的に脊髄を傷つけて後ろ脚にまひが残ったマウスを使った。西堀教授が開発した、炎症を促進するタンパク質「HMGB1」に対する抗体を損傷5分後と6時間後にそれぞれ投与し、1週間後に神経幹細胞を移植した。

 損傷から12週間後に後ろ脚の運動機能を点数化して評価すると、全く治療しなかった個体に比べて数値が2倍強となり、後ろ脚を地面について歩けることも確認した。自然治癒に任せた個体は脚を引きずったままだった。

 研究グループは、HMGB1抗体が炎症を抑えることで、神経幹細胞が神経回路を修復する働きを高めたとみている。

 抗体投与と細胞移植のいずれか単独でも運動機能は回復したが、西堀教授は「両方を組み合わせると相乗効果が得られ、人への新たな治療戦略につながる可能性がある。今後、損傷からどのぐらいの時間まで抗体の投与が有効なのかを調べたい」としている。

 慶応大の岡野栄之教授(再生医学)の話 神経幹細胞の移植による脊髄損傷後の機能回復は既に確認されていたが、HMGB1抗体を入れることで今までに見たことがないぐらいの効果が出ており、実用化が期待される。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年03月08日 更新)

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