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障害者ケアマネジメント導入の「自立支援法案」 体制不備“見切り発車”懸念 岡山市などで厚労省試行事業 評価法に課題

 来年1月の施行を目指し、今国会で審議中の「障害者自立支援法案」。介護保険と同じようにケアマネジメントが障害者にも導入される。だが、岡山市など全国61都市で今夏、支援の必要度を評価する試行事業を行ったところ、知的や精神障害の評価方法が定まっていないなどの課題が浮上。準備不足の中での「見切り発車」を危ぶむ声が、岡山県内などの障害者や実施主体の市町村から出ている。

 障害者がホームヘルプやデイサービスなどの福祉サービスを受ける場合、現行の支援費制度は必要なサービスを自分で選ぶ。だが新法では、障害者個々が判定を受け、サービスが決まるケアマネジメントの手法を取り入れる。

 その際、受けられるサービス量の指標となるのが「障害程度区分」。具体的な区分は決まっていないが、厚生労働省は六、七月に岡山、高松、東広島市など全国六十一都市で「障害程度区分判定等試行事業」を実施。生活上の困難さを調査項目ごとに点数化して積算する「一次判定」と専門家が審査会で決定する「二次判定」を行った。

 しかし、高齢者対象の介護保険をそのまま障害者に当てはめたような判定方法に、実態との「ずれ」が生じている。

 ホームヘルプサービスを受けている障害者二十三人(身体七人、知的六人、精神十人)を判定した岡山市。要介護5~1、要支援、非該当と七段階ある判定のうち、サービス対象外の非該当が八人と約35%を占めた。

 「知的と精神障害への評価が低くなる」と市障害福祉課。非該当の八人中四人が知的、三人が精神障害だった。調査項目の七割以上が要介護認定と同じで、身体的なハンディに偏っているからだ。このため、同市では二次判定で八人全員を要支援か要介護1に上げた。

 知的、精神を想定した項目もあるが、今回は点数化していない。「介護的な部分以外の評価方法は今後検討する」と厚労省は説明するものの、施行まで半年もない中で市町村の戸惑いは否めない。

 支援費制度ではサービスを決定する際の「基準」がないため、障害者間で利用時間などに大きな格差があり、障害程度区分によって「公平になる」と期待する向きがある。

 その一方、「実態に沿った形で判定してもらえるのか」と不安視する障害者らの声も根強い。

 自立支援法では、介護保険のように専門性の高いケアマネジャーを設けるわけではない。厚労省は十一月に自治体の担当者を対象にケアマネジメントの研修会を三日間開催するくらいで、制度的に専門性が担保されているとは言いにくい。

 「障害者にケアマネジメントできる職員が市町村にどれだけいるか…」。岡山県内のある市の担当者は現場の混乱を危惧(きぐ)している。


ズーム

 障害者自立支援法案 身体、知的、精神の障害別に分かれた福祉サービスを一元化する法律。既に衆院を通過し、参院で審議中。財源不足を理由に、サービス利用者の原則1割の定率(応益)負担などを定めたため、障害者から反対の声が多く上がっている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年08月02日 更新)

タグ: 健康福祉

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