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乳がん患者の喪失感癒やす 人工ボディー作る宮崎さん(岡山) 要望聞き乳房、パッド製作

パッドや人工乳房、乳頭、義指を前に工程を語る宮崎さん

 乳がん患者は手術で病は治っても、乳房を切除した喪失感に悩む人が少なくない。そうした一人一人に合わせオーダーで、胸の膨らみを補うパッドや人工乳房を作る工房が岡山市にある。「外出すると人の目が気になる」「友人や家族と温泉に入りたい」。女性ならではの悩みを癒やす。

 元歯科技工士の宮崎文伸さん(29)が営む「アートボディー」(同市北方)。

 宮崎さんが中学2年の時、母親(57)も乳がんの疑いで手術を受けた。幸い乳房は残せたが、同じ病室の患者が手術で乳房を失い号泣するのを目の当たりにした。それを聞いた宮崎さんは2005年、本物に似せた人工ボディーを製作する名古屋市の業者を知り、「患者を喜ばせたい」と1年半の修業を積み、06年末に独立した。

 製作するのは、ブラジャーの中に入れ膨らみを補うパッドと、見た目を再現し入浴も可能な人工乳房、乳頭や義指。一人一人異なる胸や指の型を取り、客の要望を聞きシリコンで製作、着色する。義歯とほぼ同じ工程で、歯科技工士時代の経験が生きている。

 これまでにパッド10人分と義指15人分、他の業者の下請けの人工乳房6人分を作った。価格はパッドと義指が、それぞれ5万2500円から。注文するのは中高年の女性が大半。京都や福岡など岡山県外からわざわざ足を運ぶ人もいる。

 乳がんは近年、乳房全摘手術に代わり温存手術が主流となった。ただ、パッドの利用者は10年以上前に全摘手術を受け、手作りや既製品のパッドが合わず苦労した人が多い。人工乳房を着け孫と入浴できたり、義指で社交ダンスを楽しむ女性もいるという。

 完成後に客から「イメージと違う」と言われることも。宮崎さんは「作り直しも多く、経営もまだ厳しいが、利用者に満足してもらえるよう技術を磨きたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年09月29日 更新)

タグ: がん女性

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