文字 

食道がん手術で新治療 「通路」に腸活用 岡山大病院開発 胃の機能温存

猶本良夫科長

 岡山大病院消化管外科は、食道がんの手術で切除した食道の代わりに大腸や小腸を「通路」として使う新治療を開発した。胃を食道と直接つなぐ従前の手法に比べ、胃の機能を温存して体重減少や胆汁の逆流を防ぎ、患者のQOL(生活の質)向上に結びついているという。

 首から下の食道を広範囲に切り取る食道がんの手術では、胃を食道のある胸部付近まで持ち上げる方法が一般的。だが、食べ物をため込んだり排出したりする胃本来の機能が低下し、胆汁が逆流して気管に詰まり肺炎を起こすことがあった。

 新治療は、切除した腸を胃と食道の間に挟む手法。腸周辺の血管を多く切って食道付近の血管と結ぶため、血流の安定に課題があったが、血管の切断を最小限に抑えて食道付近に移動させる安全な手術方法を確立した。

 同科はこれまで13症例(大腸4例、小腸9例)で実施。体重減少が平均で従前の半分に抑えられるなど効果が表れ、切除後の腸も消化や吸収に問題は起きていないという。

 今後は、内視鏡手術で行うなど適用を大幅に拡大していく方針。猶本良夫科長は「以前は、胸部まで持ち上げた胃にがんができると位置的にも手術が難しかった。今回の新手法はさまざまな面で効果が期待できるだけに、安全性を確保しながら多くの患者に導入していきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年10月21日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ