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がん細胞死滅効果大 岡山大病院・香川助教ら新ウイルス製剤開発

香川俊輔助教

 岡山大病院遺伝子・細胞治療センターの香川俊輔助教( 腫瘍 ( しゅよう ) 外科学)らは、同大開発の腫瘍融解ウイルス「テロメライシン」に、がん細胞の自滅を促す遺伝子「p53」を組み込んだ新たなウイルス製剤を開発。がん細胞を死滅させる効果が大きいことを、試験管レベルの実験で確認した。 

 テロメライシンの効果を増強する成果として、新薬開発への展開が期待される。研究成果は名古屋市で開かれる日本 癌 ( がん ) 学会で、28日に発表される。

 香川助教らは遺伝子組み換え技術を使い、テロメライシンのゲノム(全遺伝情報)にp53を組み込み、肺がんや食道がんなど7種類のがん培養細胞に投与。テロメライシンのみの投与と比べた抗腫瘍効果を調べた。

 その結果、がん細胞を殺す能力が肝臓がんでは最大で11倍、肺がんで5・4―2・8倍となるなど、すべてのがん細胞で効果がテロメライシンだけの投与を上回った。

 同センターの藤原俊義准教授は「動物実験ではテロメライシンが効きにくいがんでも効果が見られており、将来的には臨床試験を実施したい」としている。

 同大は1999年、アデノウイルス(風邪ウイルスの一種)にp53を組み込んで患部に注射する国内初の肺がん遺伝子治療に着手。腫瘍の増大を抑えるなどの効果を確認。テロメライシンも米国での臨床試験で同様の効果が見られている。


 テロメライシン 無害化させたアデノウイルスと、がん細胞の増殖にかかわる酵素テロメラーゼの一部を結合させたウイルス。岡山大が開発した。ヒトのがん細胞に感染すると1日で10万―100万倍に増え、がん細胞を融解して破壊する。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年10月28日 更新)

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