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がん細胞自滅遺伝子の作用メカニズム解明 岡山大センターなど新薬開発へ

REICのメカニズム解明などを説明する公文センター長=東京都内

 岡山大ナノバイオ標的医療イノベーションセンター(センター長・公文裕巳同大大学院教授)は9日、東京都内で記者会見して、がん細胞を自滅させる遺伝子「REIC(レイク)」が作用するメカニズムを解明したと発表。成果を受けて、研究事業の協働参画企業2社が新しい遺伝子医薬の実用化に向けた開発に本格着手することも報告した。

 研究では、前立腺がんのマウスの実験などにより、細胞の自滅を誘引するのが、細胞の器官の一つである小胞体であることを突き止めた。がん細胞に侵された小胞体では、入ってきたREICを異常タンパク質とみなし、ストレス反応で細胞死するという。また、患部に投与したREICは肺に転移したがん細胞にも効果があり、免疫力を高める機能を持つことも分かった。

 「日東電工」(大阪市)は、患部へのREICのベクター(運び役)として、体への影響が小さく、繰り返し使用できる生分解性ポリマーを利用した新薬の開発に着手。岡山大発のベンチャー企業「桃太郎源」(岡山市)は、アデノウイルスベクターを使った米国でのヒトへの臨床試験のため、食品医薬品局(FDA)との協議を始めた。早ければ来年6月にも承認を受けられるという。

 REICは2000年に同大が発見。がん細胞のみを選んで細胞死させる働きがあることが判明していたが、詳しいメカニズムは分からなかった。

 公文センター長は「多種類のがんに適用可能であり、世界でがんに悩まされている方への夢のがん治療遺伝子と自負している」と話した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年12月10日 更新)

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