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問題患者(モンスターペイシェント) 対策本格化 広域組織で勉強会 岡山県内外の病院、弁護士 マニュアル作成狙う

 医師、看護師らに暴言や暴力で危害を加えたり、診療を妨害する「問題患者(モンスターペイシェント)」対策へ、岡山県内外の病院と弁護士が共同で動き出した。法的に適切な対処法のマニュアルを作成するのが狙い。身体的、精神的苦痛から辞めてしまう医療従事者もおり、医師、看護師不足が社会問題化する中、対策が急がれている。

 「法外な額の賠償を求めてくるのは不当要求に当たり応じる必要はない」「問題患者とのやりとりは録音したり、看護記録に記しておくと証拠になる」。

 昨年12月中旬、岡山大病院(岡山市鹿田町)で開かれた「問題患者等対応検討会」(MPA)の第2回勉強会。関係者ら約30人が集まり、具体事例に対する対処法について意見を発表、その意見に対して弁護士が法的な助言を添えた。

 MPAは川崎医科大付属、岡山大病院など岡山県内をはじめ、広島、香川、鳥取、兵庫県内で350以上の病床を持つ15の病院(精神科除く)と、岡山弁護士会所属の4人で構成。同年8月に立ち上げた。

 大学、民間病院といった枠を超え、広域的に集まって実践的な対策を話し合う組織は「全国でも異例」(森脇正弁護士)という。

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 全日本病院協会(東京、会員2248病院)の調査では、2007年1年間に576病院で医師や看護師らへの身体的、精神的暴力、セクハラなどが起きていたことが判明。件数は6882件に上った。

 MPAメンバーのある病院では昨年1月、医師の診療態度に言い掛かりをつけて暴力を振るった男が現行犯逮捕された。別の病院では、患者の家族がトラブルから院内に灯油を持ち込んだケースがあったという。

 岡山県内の具体的な数字はないが、病院関係者は「問題は日常的に発生。仕事のつらさより、暴力などのストレスに耐えきれず辞める医療従事者もいる。問題患者が医療崩壊の一端にもなっている」と指摘する。

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院側はこれまで、職員がその場で話をつけて収拾を図り、やむを得ない場合は警察への通報や損害賠償を求める民事訴訟を起こして対応してきた。ここ数年、法的手段をとる病院は少なくないが、診療を断る「診療契約解除」に至るケースはまだほとんどない。医師には医師法で応召義務があり、「正当な理由」がなければ診療を断れないからだ。

 MAPではこの点も検討。森脇弁護士は「問題患者の行為の大半は『正当な理由』に当てはまるが、病院側は判断しかねている。何が理由になるかを具体的に、明確にしていきたい」と話す。

 今後は定期的に勉強会を重ね、問題患者対策の指針となる対応マニュアルを完成させる方針。メンバー以外の病院にも配布し、各病院が統一的な対応ができるよう体制づくりも進めたい考えだ。

 MPA会長の森定理・川崎医科大付属病院事務部参与は「故意に基づく言動や態度が社会的に許容限度を超えたら問題患者。その数が1人でも、医師や看護師が費やす労力と時間は計り知れない。医療従事者の保護はもちろん、一般患者への診療に支障がないようにしていきたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年01月10日 更新)

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