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「現場に強い医師」育成へ訓練センター構想 岡山大病院 模擬機器活用、技術アップを狙う

麻酔医用のシミュレーター。実際の医療行為を反復練習できる=岡山大病院

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は、若手医師らの診療技術向上へ、麻酔や救急など多様な医療行為の反復練習が可能なシミュレーター(模擬訓練機器)を用いた教育システムの確立を目指している。医師不足が深刻化する中、“現場”に強い医師を育てる狙い。数年後には高機能機器を集めた訓練センターを開設、民間の医師らも含めた中四国の総合教育拠点づくりも視野に入れている。

 医学部生や研修医らに正確な診療技術を身に付けてもらい、即戦力化を図る。出産・育児などで一時現場を離れた女性医師の復帰にも活用する。山形大医学部に10種類の機器を備えたラボラトリー(研究室)があるが、国などによると「総合的な教育センターは国内では珍しい」という。

 構想では岡山大病院内に訓練センターを設け、「模擬実習」を取り入れた医学教育カリキュラムを構築。シミュレーターは現在、各診療科が個別に所有している胎児超音波検査、麻酔、救急医療技術の機器に加え、内視鏡検査や関節鏡手術、血管の造影・治療用などの機器を新たに導入する考え。

 センター構想は、岡山大大学院医歯薬学総合研究科腫瘍(しゅよう)・胸部外科の山根正修助教らが昨年12月に岡山大病院に事業推進を提案。医学教育の改革に関する講習会などに参加してきた山根助教は「最新のシミュレーターはリアル感が高く、医学教育に取り入れる意義は大きいが、国内では十分活用されていない場合が多い」と話す。

 同構想は現在、同大が学内の優れた事業に学長裁量で経費を出す「学長裁量経費」に採択され、診療科ごとに異なる教育方法の一元化へプロジェクトチームが発足。山根助教は「シミュレーターを取り入れた総合的な教育システムをつくり上げて医師らのスキルアップに寄与し、地域に一層質の高い医療を提供していきたい」としている。

米で先進事例視察

 シミュレーターの訓練センター開設を目指す岡山大病院のプロジェクトチームは3月上中旬、事業推進リーダーの山根正修・同大大学院医歯薬学総合研究科助教ら医師5人を先進地の米国に派遣。仮想人体を用いた現地大学の教育環境や、関連メーカーの先端機器などを視察した。

 山根助教によると、スタンフォード大は学内に救急や外科などに特化した数カ所の訓練センターを設け、専門のカリキュラムで医学教育を実施。仮想人体が置かれた訓練用手術室の実習では、指導医がマジックミラー越しに人体模型の症状をさまざまに変化させ、訓練者が処置を行っているという。

 訓練の様子はビデオで撮影し、事後の指導に役立てる。来年にはセンターを1カ所に集約する計画もあるといい、「非常に参考になった」と山根助教。

 デューク大の施設は内視鏡、腹腔鏡(ふっくうきょう)手術などの訓練用機器が10台ほど並び、救急処置室での対処をパソコン上で習得するシステムを整備している。また、欧米では技量の優れた医師にも、難手術の前に機器で反復練習している人がいるという。

 山根助教らは帰国後、3月下旬に岡山市内で医師、同大医学部生らを対象に「未来の医療教育トレーニングセミナー」を開いて、救急医療用の高性能シミュレーター実演などを実施。センター開設へ準備を加速させている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年04月20日 更新)

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