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担い手確保 高校生に介護就業体験 岡山県福祉人材センター導入

緊張した面持ちで高齢者に昼食トレーを運ぶ高校生(左)

 介護職員が慢性的な人材不足となる中、岡山県福祉人材センター(岡山市北区南方)は本年度、高校生を対象としたインターンシップ(就業体験)に乗り出した。介護業界は他業種からの転職者の割合が多いことに着目。若いうちに介護のやりがいを知ってもらうことで、将来の中途採用も含めた人材の取り込みにつなげたい考えだ。

 「今日は赤飯ですよ」。8月下旬、介護付き有料老人ホーム・さわらびの家(同平野)。高校1年男子(15)が緊張した表情で利用者に昼食のトレーを運んだ。同ホームでは施設内の清掃や車いすを押しての移動介助なども経験した。

 「慣れないことばかりだったけれど、『ありがとう』と言われるとうれしい。将来を考える貴重な体験になった」と相沢さん。運営する社会福祉法人・福寿会の田中里子理事は「現場を見て、体験すればやりがいも難しさも分かる。介護に興味を持つきっかけにしてほしい」と言う。

 インターンシップは8月、同センターが県内の介護施設や高校に呼び掛けて実施し、高校生16人が岡山、総社、備前市の計9施設を訪問。2~3日間の体験メニューに加えて、事前に施設担当者との面談の場も設けた。仕事の厳しさや待遇面などを含め、ありのままの現場を知ってもらうためだ。

 公益財団法人「介護労働安定センター」岡山支部の2017年度実態調査によると、回答した113事業所のうち、「従業員が不足している」としたのが77事業所と7割近くを占めた。「重労働や低賃金といった介護のマイナスイメージもあり、新卒の人材獲得は厳しい」(県福祉人材センター)という。

 さらに、県の介護サービス需給見通しでは、県内の介護職員は15年が3万3981人なのに対し、団塊世代が75歳以上となり介護ニーズが飛躍的に高まるとされる25年には4千人超の担い手不足が生じるとされる。

 こうした中、県福祉人材センターは同実態調査で約8割の介護職員が「前職あり」と答え、そのうち6割が他業種から移ったことに着目。職業選択を具体化させる時期に短期間でも介護職の体験があれば、学校卒業後の就職先としてだけでなく、転職先としても選ばれる可能性が高まると考え、高校生を対象とするインターンシップ導入に踏み切った。

 介護業界では、県や県社会福祉協議会が中心となって、業務の達成度や賃金などで介護施設を評価する認証制度の導入も検討されている。同センターの大森治美副所長は「利用者の心に寄り添う介護のやりがいを、あらゆる世代に理解してもらえるよう取り組むとともに、現場の魅力アップへの方策を模索したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年09月24日 更新)

タグ: 介護

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