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便からがん簡易検出 早期発見へ新手法 岡山大・永坂助教ら開発

永坂岳司助教

 岡山大病院消化管外科の永坂岳司助教(42)らのグループは微量の便から抽出したDNAで大腸がんや胃がんの有無を調べる方法を開発した。簡便に早期発見できる新たなスクリーニング(ふるい分け)検査につながる成果として米科学誌「ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティチュート」に掲載する。

 便を使った大腸がんのスクリーニング検査は、便中の血液をみる便潜血反応検査が普及しているが、腫瘍が大きくなり出血した段階で初めて分かり、発見率は20―40%にとどまり早期発見が難しい。

 永坂助教は、DNAにメチル基という分子が結合して遺伝子構造が変化し、本来の働きが抑制される「メチル化」という現象に着目。大腸がん組織や正常組織など788個の凍結標本を調べたところ、2種類のがん抑制遺伝子で腫瘍(しゅよう)の成長とともにメチル化が広がり、がんの進行と関連があることを突き止めた。

 腸管からはがれ落ちたがん細胞は便に残りやすく、微量の便に亜硫酸水素塩を加えてメチル化を検出したり、DNAを効率的に増幅して調べやすくする独自の手法を考案した。

 これらの手法を用い、岡山大病院などで大腸がんや胃がん患者、内視鏡検査で異常がなかった人ら296の便検体について同じがん抑制遺伝子のメチル化を調査。大腸がんの75・0%、がんになる手前のポリープの患者の44・4%でメチル化が認められたのに対し、病変のない患者では10・6%にとどまった。

 また、胃がんの57・1%でもメチル化が判明。大腸同様に消化管からがん細胞が落ちて便に混ざることを裏付け、レントゲンや内視鏡検査以外に便検査でも、がんを検出できる可能性を示した。

 永坂助教は「便潜血反応と同じ10ミリグラム程度の便で検出でき、健診などで見つからなかったがんを高い精度で発見できる。より多くの症例を調べ、簡単な検査キットの開発にもつなげたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年08月18日 更新)

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