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慢性疼痛の遺伝子発見 痛み抑える治療法開発 岡山大大学院・板野助教、大内田准教授

板野義太郎助教

大内田守准教授

 岡山大大学院の板野義太郎助教(麻酔・蘇生(そせい)学)と大内田守准教授(分子遺伝学)は、交通事故や手術の後遺症などで原因不明の激しい痛みが続く「慢性疼痛(とうつう)」に関与する遺伝子を発見、遺伝子の働きを抑えて痛みを緩和する新しい遺伝子治療法を開発した。ラット実験で効果を確認しており、治療薬の開発につながる成果として注目される。

 慢性疼痛はがんによって生じたり、傷や病気の治癒後もなくならない痛みで全国に1700万人いるともいわれる。心因性以外に末梢(まっしょう)神経や中枢神経の圧迫、損傷などが原因とされるが解明は進まず、有効な治療法がなかった。

 板野助教らは、ラットの脊髄(せきずい)近くの知覚神経が集まる場所の遺伝子を解析。末梢神経を糸で縛って痛みを与えると、通常の3―4倍に増える特定の遺伝子を確認した。この遺伝子が痛みの信号を脳に伝える重要な役割をしていると考えた。

 遺伝子はタンパク質と結合して機能する性質を利用。痛みを伝える遺伝子の塩基配列を分割して作った“おとり”でタンパク質を誘い、既存の遺伝子に結合させない方法を考案した。

 実験では、ラットの末梢神経を縛って痛みに敏感な状態にし、足裏を刺激してどの程度の痛みで逃げるか確認。“おとり”を注射しなかったラットは縛っていないラットの3分の1程度の刺激で逃げたが、注射したラットは縛らないのと同程度の刺激に耐えた。痛みの軽減効果は3日間続いた。

 研究成果は16―18日に東京で開かれる「イノベーション・ジャパン2009―大学見本市」で発表する。

 板野助教は「現時点でラットに運動まひなどの副作用は起きていない。製薬会社に協力を求め、がんの痛み緩和にも活用できる遺伝子治療薬の開発につなげたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年09月15日 更新)

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