人工歯根と顎の骨 がっちり接着 岡山大大学院グループが新コーティング法 炭素使い長持ち
岡山大大学院医歯薬学総合研究科の永井教之教授(口腔(こうくう)病理病態学)らの研究グループは20日までに、人工歯根と顎(あご)の骨の結合接着力を高める、炭素を使った新しいコーティング法を開発した。現在の方法よりはく離に強いなど人工歯根を長持ちさせる効果が期待され、研究グループは動物実験を行い、実用化を目指す。同大は特許出願した。
人工歯根は失われた歯の再建のために顎の骨に埋め込む“土台”。上に義歯を装着する。人工歯根にはチタンが使われ、現在の方法では歯や骨と同じ成分の化合物アパタイトをコーティングし、埋め込む。アパタイトの性質で人工歯根周辺の骨が集まる骨誘導反応が起き、骨との結合が強まる。
しかし、アパタイトの粉末を膜にするコーティングの過程で約二千度に加熱するため、高温の影響でやがてチタンの人工歯根と膜の間で亀裂やはく離が発生。また、アパタイトの膜自体も顎の骨の中に自然に吸収され、結合が弱くなる。
新コーティング法は、チタンなど金属との接着を強める性質の炭素に着目。チタン化合物を溶かしたコーティング液を作り、人工歯根を漬けた後、加熱して炭素を含むチタン酸カルシウムの超薄膜(チタン酸カルシウム―非晶質炭素複合物)にする。炭素は、加熱時に液に含まれる二酸化炭素から酸素を飛ばして含ませる。
従来の方法と同じく骨誘導反応を起こす性質があり、加熱温度は五百~六百五十度と低くできることで、顎に埋め込んだ後、チタンとの亀裂やはく離を防ぐ。骨の中への吸収速度はチタンの働きで十分の一に抑えられる。厚さもこれまでの三十~五十ミクロンが、五ミクロン前後で済むという。
研究グループはコーティングの持続力を従来の数倍と予測。永井教授は「人工歯根だけでなく、人工関節の耐久性も向上させられそう。腐食に強く、工業分野への応用も可能だろう」としている。
新しい考え
人工歯根に詳しい九州大大学院歯学研究院の石川邦夫教授(生体材料学)の話 コーティングとチタンの接着をどう長持ちさせるかが人工歯根の課題だが、炭素に着目した点は新しい考え。長期の接着が予想される。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
人工歯根は失われた歯の再建のために顎の骨に埋め込む“土台”。上に義歯を装着する。人工歯根にはチタンが使われ、現在の方法では歯や骨と同じ成分の化合物アパタイトをコーティングし、埋め込む。アパタイトの性質で人工歯根周辺の骨が集まる骨誘導反応が起き、骨との結合が強まる。
しかし、アパタイトの粉末を膜にするコーティングの過程で約二千度に加熱するため、高温の影響でやがてチタンの人工歯根と膜の間で亀裂やはく離が発生。また、アパタイトの膜自体も顎の骨の中に自然に吸収され、結合が弱くなる。
新コーティング法は、チタンなど金属との接着を強める性質の炭素に着目。チタン化合物を溶かしたコーティング液を作り、人工歯根を漬けた後、加熱して炭素を含むチタン酸カルシウムの超薄膜(チタン酸カルシウム―非晶質炭素複合物)にする。炭素は、加熱時に液に含まれる二酸化炭素から酸素を飛ばして含ませる。
従来の方法と同じく骨誘導反応を起こす性質があり、加熱温度は五百~六百五十度と低くできることで、顎に埋め込んだ後、チタンとの亀裂やはく離を防ぐ。骨の中への吸収速度はチタンの働きで十分の一に抑えられる。厚さもこれまでの三十~五十ミクロンが、五ミクロン前後で済むという。
研究グループはコーティングの持続力を従来の数倍と予測。永井教授は「人工歯根だけでなく、人工関節の耐久性も向上させられそう。腐食に強く、工業分野への応用も可能だろう」としている。
新しい考え
人工歯根に詳しい九州大大学院歯学研究院の石川邦夫教授(生体材料学)の話 コーティングとチタンの接着をどう長持ちさせるかが人工歯根の課題だが、炭素に着目した点は新しい考え。長期の接着が予想される。
(2005年11月21日 更新)