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高齢者接種7月完了は18市町村 本紙調査、医療従事者の確保苦慮

17日に始まる施設入所者以外の高齢者への接種を控え、市民からの問い合わせの電話に対応する岡山市職員ら。各自治体は7月末までの完了に向けて準備を進める=10日

 高齢者に対する新型コロナウイルスワクチンの接種で、岡山県内の全27市町村のうち、政府方針である7月末までの完了を見込む自治体が18市町村にとどまることが、山陽新聞社の調査で分かった。また県内で17日から一斉に始まる施設入所者以外の高齢者への接種について、笠岡市と勝央町は開始が遅れると回答。多くの自治体で接種の担い手である医療従事者の確保に苦慮している実態が改めて浮かんだ。

 高齢者への接種は4月12日に全国でスタートし、県内では国からのワクチン供給が限られる中で施設入所者を優先して進めている。調査は、入所者以外の接種予約の受け付けが始まったのに合わせて10、11の両日、27市町村の担当者に電話による聞き取りで実施。7月末までの接種完了の方針は、菅義偉首相が4月23日の記者会見で表明、全国の市町村に対して計画の前倒しを要請している。

 接種完了を「可能」とした自治体のうち、岡山市は「当初から7月中旬に終わらせるように計画を作っている」、西粟倉村は「高齢者の数が少なく、予約も既に全体の約7割は終えている」とし、接種がスムーズに進む見通しを示した。

 ただ、政府要請を受けて多くの市町村が接種計画の見直しを余儀なくされており、完了できるとの回答を「条件付き」とするケースも目立った。倉敷市や津山市は「接種を終えるには医療機関の協力が前提だ」、新見市と早島町は「希望者が想定を上回れば対応は厳しい」とした。

 一方、7月末に「間に合わない」としたのは6市町。理由は「医療従事者が不足しており、市が努力して何とかできる状況ではない」(浅口市)、「町内の医療機関が少ない」(久米南町)などが挙がり、2月に先行して始まった医療従事者への接種の遅れを指摘する自治体もあった。「8月中には終えたい」とする回答が多かった。

 完了時期が「見通せない」としたのも3市町あり、このうち医療機関での「個別接種」のみで行う予定だった和気町は、予約状況に応じて特設会場での「集団接種」についても実施の検討を始めるとした。

 調査では、17日から予定通り接種が開始できるかどうかも質問。笠岡市は、現状ではワクチン供給が限られていることから集団接種を18日に始め、メインの個別接種は6月1日にずれ込むと回答した。集団接種のみで実施する勝央町は今月24日にスタートさせるとし、「これまで施設入所者への接種を優先してきた結果だ」とした。

 国への要望を聞いたところ、「ワクチン供給情報を明確に示してもらわなければ接種計画が立てづらい」(美作市)、「とにかく医師、看護師を派遣してほしい」(浅口市)といった声が上がった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年05月12日 更新)

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