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接種予約のネット対応、3割未満 岡山県内医療機関 電話殺到一因に

接種の予約を受け付ける岡山市内の医療機関。県内でオンライン予約に対応する施設は全体の3割に満たない=10日

県が開設した共通予約システムの画面の見本

 岡山県内で新型コロナウイルスのワクチン接種を行う医療機関約740施設のうち、県がインターネット上に開設した「共通予約システム」に対応しているのは約200施設と全体の3割を下回ることが、県への取材で分かった。事務処理に手間を要することなどから対応を見送る施設が多く、予約電話の殺到による受け付けの混乱の一因となっている。

 ワクチン接種は事前に申し込みが必要で、各市町村のコールセンターもしくは医療機関に電話するか、県のシステムにアクセスして予約する。

ウェブ不可

 県内で施設入所者以外の高齢者を対象に予約の受け付けが始まった10日、岡山市の女性(53)はネットに不慣れな母親(77)に代わり、朝一番に県のシステムで予約を試みた。しかし、かかりつけの診療所のページに進むと、「ウェブ予約不可」の文字が表示された。

 診療所がシステムに対応していないためで、慌てて電話したものの、回線が混み合ってつながらない。結局母親が診療所に赴くなどして何とか予約を取ったというが、「オンラインならわずか数分で終わったのに…」と女性は話す。

 この日、県内ではコールセンターや医療機関に申し込みの電話が集中し、窓口を直接訪れる人も相次いだ。

設定に手間

 ワクチンの接種を巡って県と県内全27市町村では、居住地以外の市町村でも受けられる仕組みを整えている。県がシステムを開設したのはこれに対応するためで、電話予約を受け付ける医療機関の業務負担の軽減も狙ってのことだった。

 しかし、システムを活用する場合、各曜日で30分ごとの接種予定人数を設定する必要があるなど、むしろ負担が増すと考える医療機関が少なくない。

 「接種の日程は通常診療に左右され流動的。変更があるたびに設定し直さなければならないのは大変な手間だ」。岡山市内のある診療所はオンライン予約の導入を見送った理由をこう説明する。

診療に影響

 かかりつけの患者への接種を優先したいとする医療機関が多いことも、システムへの対応が進まない要因となっている。

 別の診療所の医師は「持病やアレルギーを把握している患者に接種する方がこちらも安心。初めて来院する人は問診に時間がかかり、通常診療に影響が出かねない」と言う。

 それでも県は、今後接種の対象が高齢者以外に拡大されれば、オンライン予約の需要はさらに高まるとみており、医療機関に改めて活用を呼び掛ける方針だ。

 負担軽減に向けて、予約枠の設定などの入力を代行するサポートセンターを設置しており、県ワクチン対策室は「さらに支援環境を整え、システム導入を促したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年05月14日 更新)

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