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「救急搬送困難事案」再び急増 岡山、倉敷 医療体制の逼迫影響

患者を病院に救急搬送する岡山市消防局の職員。搬送先がすぐに決まらない困難事案が増え、現場の危機感も強くなっている=14日、同市北区国体町

 新型コロナウイルスの感染急拡大による医療体制の逼迫(ひっぱく)を背景に、岡山、倉敷市の消防局管内で患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」が再び急増している。4月上旬から5月上旬にかけ岡山28件、倉敷55件(いずれも速報値)と2019年の同期に比べ岡山が3倍、倉敷が2倍程度に増加。昨冬の流行「第3波」でも増えたが、今回は感染状況がより厳しくなっており、関係者は「困難事案が一層増える恐れがある」と危機感を強めている。

 救急搬送困難事案は、医療機関に受け入れ可能かどうか4回以上照会し、かつ救急隊の現場到着から搬送開始まで30分以上かかった場合を集計した。

 おおむね1週間単位でみると、岡山市消防局管内(岡山市、吉備中央町)では、4月5~11日の3件から右肩上がりで増え、同26日~5月2日は12件。新型コロナの影響がなかった19年4月1日~5月5日は計9件にとどまっていた。

 倉敷市消防局管内(倉敷市、早島町、浅口市金光町地区)でも、4月1~7日の10件から同29日~5月7日には26件に増えている。19年4月1日~5月7日は計27件だった。

 倉敷市消防局によると、この間、搬送開始までにかかった時間の最長は1時間33分。患者の受け入れ先が決まるまでに最大で12回照会したケースもあった。患者が新型コロナに感染しているか、その疑いがある事例は8件あった。

 岡山市立市民病院(同市北区北長瀬表町)の桐山英樹・救急センター長は「新型コロナ患者の治療に医療資源を振り分けるため、救急患者の受け入れを一時的に停止せざるを得ない状況が度々起きている。その頻度は第3波の時よりも多い」と危機感をあらわにする。

 両消防局は「このまま新型コロナの患者が増え続ければ、救急医療の現場がさらに深刻な状況になっていく」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年05月15日 更新)

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