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(3)ご存じでしょうか?国民運動計画「健やか親子21(第2次)」 岡山ろうさい病院小児科部長 中務陽子

中務陽子氏

 厚生労働省の人口動態統計によると、国内で生まれた日本人は、2017年に100万人を下回って以来減少し続け、19年には87万人を割り込みました。そして昨年の速報値ではさらに2万人以上も減少し過去最低の出生数となっています。この出生数の減少は小児科医として、より身近で深刻な問題と感じています。

 多くの人々にとってなじみのない国民運動計画という言葉は、それだけで敬遠したくなる印象を持ちますが、01年に始まった「健やか親子21(第1次)」から続く国民運動計画であり、少子化の問題の解決を目指すと共に、少子化社会の国民が健康で明るく元気に生活できる社会の実現を図るための国民運動(健康日本21)の一翼を担うこととなっています。そして25年までに、すべての子供が健やかに育つことができる社会の実現を目指しています。

 まずは家庭に子供がいる、いないにかかわらず、多くの方々がこの運動の内容を知ることが大切だと思います。概略としては現在の母子保健を取り巻く状況を踏まえて下記の三つの基盤課題が設定されています。

 (1)若い世代の人たちが抱えている妊娠・出産・育児の困り事に対し関連機関等が連携を強化し、切れ目のない支援体制を目指す。

 (2)学童・思春期の世代に対し、健康の維持・向上に自らが取り組むための健康教育の推進と次世代の健康を支える社会の実現(次世代の健康を育む保健対策の充実)を目指す。

 (3)社会全体で子どもの健やかな成長を見守り、子育て世代の親を孤立させないよう支えていく地域づくりを目指す。

 そして上記の基盤課題の中で特に二つの重点課題として、育児のさまざまな困難感を感じる親に丁寧に向き合い寄り添う支援の充実と、児童虐待防止対策があります。

 これらの具体的な方策は厚生労働省が地方自治体にその指針を示し、各自治体が母子保健計画を策定して地域支援サービスを行います。行われたサービスの履歴はデータ化され、そのデータを基に医学関連学会などで構成される協議会が効果的な調整を図り、地方の母子保健事業の質的向上を目指します。

 さらにこの運動は、子供の健康増進や子育て中の勤労者の生活支援を行ったり、働く女性がキャリアをあきらめることなく子どもを育てることができる環境作りを行う企業や団体の参加も求めています。既に関心を示した企業や団体は「健やか親子21応援メンバー」としてその取り組みを表明しています。ぜひ一度、「健やか親子21(第2次)」のホームページを閲覧してください。

 岡山ろうさい病院小児科では掲げられた課題の解決を意識した診療を行っています。特にこの第2次では親子の心の問題に対処できる技術を持った医師を増やすことが明示されています。これまでの身体疾患の診断治療に加え、個々の子供の抱える問題に気づき、寄り添い、手を差し伸べられるよう精神科や婦人科等の他科連携や、公認心理師、管理栄養士等多職種との連携を行いながら子供の病態を広くとらえて対応する診療を心がけています。もし子供の発育で気になる事や子育てでのお困り事がありましたら、お気軽にご相談いただければと思います。



 岡山ろうさい病院(086―262―0131)

 なかつかさ・ようこ 岡山朝日高校、川崎医科大学医学部卒。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。旧国立岡山病院で研修を開始。関連病院で小児科、小児外科研修の後、2019年4月から現職。小児科専門医・指導医、地域総合小児医療認定医、子供の心の相談医、インフェクション・コントロール・ドクター。医学博士。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年05月17日 更新)

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