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岡山県、医療体制逼迫続く 県独自策効果も予断許さず

 今月末に期限を迎える岡山県内への新型コロナウイルス緊急事態宣言は28日、6月20日まで延長されることが決まった。1日当たりの新規感染者数は減少傾向に転じており、大型連休前後に打ち出した県独自の対策の効果が現れつつある一方、医療提供体制は依然として逼迫(ひっぱく)。感染力の強いインド株流入の脅威もあって、予断を許さない状況が続く。

 県内では4月に流行「第4波」が本格化し、同月中は1週間ごとの新規感染者数は毎週1・5倍程度ずつ増加。今月も勢いは衰えず、6~22日に17日間連続で1日当たり100人台の感染が確認され、8日は最多の189人となった。

 こうした状況下、県は全国的な感染の動向も見極めながら、独自の抑止策を繰り出してきた。大型連休前の4月23日に県民に対して不要不急の夜間外出自粛を求めると発表、同30日には岡山市中心部の飲食店に営業時間の短縮を要請すると表明し、連休後には要請の対象を同市と倉敷市の全域に拡大した。

 その成果は、県内が今月16日に緊急事態宣言の対象となった直後に現れ始めた。新規感染者数は17日から12日連続で前週の同じ曜日を下回り、直近1週間(20~26日、計603人)の感染者は3月11~17日以来、10週ぶりに減少に転じた。

 ただ、医療現場への過度な負担はなお解消されていない。26日時点の病床使用率は59・3%、重症者用病床使用率は56・4%に上る。県は20日に入院病床を70床増やして482床としたが、それでも感染状況が最も深刻な「ステージ4(爆発的感染拡大)」の基準を上回っている。

 警戒しなければならないのが、感染力が強く重症化しやすい変異株だ。県内では従来型ウイルスが英国由来の「N501Y」にほぼ置き換わり、免疫の働きを阻害する由来不明の「E484K」も増加。加えて、さらに感染力が強いインド株の感染確認が近隣県で相次ぎ、県内への流入が強く懸念される。

 変異株の拡大に伴い死亡例も増え、全死者(102人)の6割超に当たる67人がこの約1カ月で亡くなった。

 県内では現在、高齢者へのワクチン接種が本格化しているが、25日時点で2回接種を終えたのは対象者約56万人のうちの0・6%、2月に優先接種が始まった医療従事者(対象者約8万1千人)は52・3%にとどまり、接種の加速化が課題だ。

 この日、県対策本部会議に臨んだ伊原木隆太知事は終了後「インド株の(感染拡大の)波をつくったら大変なことになる。この宣言期間中に感染をできるだけ低い水準に抑え、ワクチン接種を進めていく」と述べた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2021年05月29日 更新)

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