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(20)リウマチ治療 倉敷広済病院 江澤 和彦理事長(49) 専門、高度な薬物治療 患者目線の医療、介護実践

「患者の気持ちを理解することが大切」という江澤理事長

 手足の関節に痛みがあり、歩けない、物が持てないという関節リウマチ。8年前、生物学的製剤が保険適用になり画期的な効果が確認され、長い間苦痛に悩まされていた患者の治療は新展開を見せている。

 「痛みの元は炎症。炎症の原因である炎症性サイトカイン(TNFなど)を狙い撃ちし、関節の腫れ、痛みなどの症状を改善。骨破壊の進行を止める効果も顕著です。私の患者さんで劇的に良くなった方が多数おられます」

 リウマチは関節を包む滑膜が炎症を起こし、骨、軟骨を破壊する自己免疫疾患。リウマチの炎症により関節内ではTNF(腫瘍壊死(えし)因子)などが過剰に産生されており、生物学的製剤はこれを攻撃する新薬の登場だった。

 それまで薬物療法は決め手を欠き、痛みを抑える対症療法の時代、それから症状がなくなる寛解が認められる段階へ進み、生物学的製剤で症状の寛解から骨破壊の抑止へとステップアップ。

 岡山県内のリウマチ治療センターの役割を果たしてきた倉敷広済病院はいち早く、生物学的製剤の治験、臨床投与に取り組み、江澤理事長は「投与症例数は400例以上と経験豊富」と自負。5種類の製剤を1年間の継続投与で症状がほぼなくなる寛解率40%、骨破壊の非進行率50%、骨破壊が改善する骨修復率15%。

 この治療実績は複数の専門職によるチーム医療の成果。常勤の専門医3人、指導医2人、CT(コンピューター断層撮影装置)、関節MRI(磁気共鳴画像装置)の画像診断をする放射線科医2人、自己注射を指導する外来看護師、リハビリスタッフ、診療情報管理士らが患者を支える。「骨破壊の進行を止め修復まで期待できるようになった。骨破壊を複数の放射線科医が読影、非進行、修復の評価をしデータ蓄積。専門病院だからできることです」。リウマチの薬物治療一筋に24年。日本リウマチ学会専門医、指導医の自信をうかがわせる。

 倉敷市水島地区で介護老人保健施設、地域包括支援センター、グループホームなどを経営。山口県宇部市でも病院と介護施設を持つ。全国老人保健施設協会常務理事を務め厚労省関連の会議や講演依頼も数多く全国を駆け巡る。

 3月24日、東日本大震災の被害を受けた宮城県石巻市にいた。医師、看護師、介護士、リハビリ専門職ら25人が支援に行きたいと手を挙げた。2日前に現地入りし、どこを拠点にするのか、薬はあるのか、現地調査し石巻赤十字病院や南三陸町の避難所などで被災者を支援した。全国老人保健施設協会として女川町へ走り安否確認が取れていなかった施設を訪問、1階が壊滅状態になりパソコンも電話も流された惨状を目の当たりにした。

 現場へ足を運ぶ行動派。知りたいことは身を持って体験する。岡山大病院に勤務していた30歳から5年間、平日夜、日祝日は地域の病院で救急当直を引き受けた。年240回、尾道市民病院は100回に及んだ。心肺停止、脳出血、心筋梗塞、消化管出血などの急患に対応。「睡眠は102時間だったが気持ちは充実していた」。ノーと言わない医療を若い情熱で実践した。

 介護も学習した。海水パンツで入浴介護、夜は紙オムツを付けおもらし、あたたかいものが冷たくなり、臭いがひどくなることも体験。人間洗濯機と異名をとる機械浴にストレッチャーで入ることに疑問を抱いた。介護士が技術をマスターすれば重度の要介護者でも1人での個浴が可能と確信した。機械浴を廃止、ヒノキの個人浴槽にし、1人の職員が部屋からの送迎、脱衣、洗身などを行うマンツーマン入浴にした。

 椅子、テーブル、手すり、浴槽、トイレの補助具も自ら設計した。椅子は2センチ刻み8段階の高さの異なるものを作った。「毎日の診療にどっぷり漬かり、生活の視点が弱かった。病気だけでなく患者さんが生活していくために何が必要か、介護から多くを学んだ」

 34歳の時、父親が急逝、宇部記念病院と合わせ2医療法人を継承し、その後多くの介護施設の開設、運営にがむしゃらに取り組んだ。3年たって得た結論は「医療、介護のゴールは尊厳の保障だ」。患者目線を優先した。患者満足度を重視、接遇を改善、食事も刻み食からソフト食へ切り替えた。「排泄(はいせつ)、入浴、食事などをケアする側の論理で行っていないか、反省し見直した。個人の尊厳の保障が第一」。

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 えざわ・かずひこ 大安寺高、日本医大卒。岡山大大学院修了。岡山大学病院、倉敷広済病院勤務。1996年、同病院院長、和香会(倉敷市)・博愛会(宇部市)理事長に就任。岡山県医師会理事、岡山県病院協会理事。

外来 江澤理事長の外来は水曜日午前9時~午後0時半、完全予約制。

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倉敷広済病院

 江澤英光医師が1977年リウマチ専門病院として開設。現在、日本リウマチ学会教育施設。リウマチ科、内科、整形外科、アレルギー科など13診療科、196床、急性期から慢性期の地域医療を展開。生活期(維持期)の介護を充実、医療と介護の両面で地域住民を支える。

倉敷市東塚5の4の16

電話086―455―5111
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年06月20日 更新)

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