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(1)「ひろがれ!笑顔」の病院 万成病院院長 小林建太郎

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小林建太郎氏

 コロナと共に生きる時代、従来では常識であったことが通用しなくなり、新しい価値観やルールに従って暮らす時代が来ています。ただその中にあっても変えてはいけないものがあります。それぞれの病院のめざすもの、それを実現するためのモットーではないかと思います。

 ■万成病院のめざすもの

 万成病院は「精神科医療からの町づくり」をめざしています。統合失調症や認知症を発症しても、一人の住民として生き生きと暮らしていける町づくり。そんな町づくりを通して、精神科医療の質が担保され、次代を担う医療人が育っていくと考えています。その実現のため万成病院には2つのモットーがあります。

 ■「ひろがれ!笑顔」

 20年前、私が院長になった翌年、日本医療機能評価機構による病院機能評価を受審しました。その時に全スタッフに万成病院のキャッチフレーズを賞金付きで募集、第1席になったのが「ひろがれ!笑顔」です。

 当時から認知症の入院のケースが増加しており、高度になっていくと患者さんの表情がなくなっていくのに寂しい思いがありました。認知症が最重度になってもわかる相手の表情は笑顔だと思います。そんな患者さん自身の笑顔を取り戻したい。スタッフの笑顔が患者さんの笑顔に、そしてそれは面会に来られた家族の笑顔につながります。笑顔の輪が病院全体にひろがり、そのパワーは地域にもひろがっていきます=写真1

 ■「輝け!5つの星」

 これを聞いただけでは何のことか分からないと思います。万成病院の国道に面した北壁には夜になると輝くイルミネーションがあります=写真2。それが5つの星。頂点の星が患者さん、その下に家族とスタッフの星、さらにその下に地域と病院を表現している星があります。大切なのはこの5つの星がすべて輝くこと。以前、配線の故障から5つのうち2つが点灯しませんでした。思った以上の暗さに驚きました。病院は、患者さん・家族・スタッフ、そして地域と共に輝いてこそ明るく、誇れるものとなると考えます。

 ■コロナ禍での実状

 この2年間、自院内でのクラスター発生をいかに予防するかが第一でした。面会や外出制限、ボランティアとの直接交流も少なくなりました。外部機関との連携では、コロナ陽性精神科患者を受け入れる公的病院の空床確保に協力、クラスター発生の病院への看護師派遣を行ってきました。

 今回のシリーズでは各部署からコロナ禍でみえてきたこと、取り組みについて具体的に取り上げていきます。

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 万成病院(086―252―2261)

 こばやし・けんたろう 川崎医科大学大学院卒業。同医大講師、万成病院副院長を経て、2001年から現職。岡山県病院協会議長・岡山支部会長、岡山県精神科病院協会副会長。専門は精神科。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年02月21日 更新)

タグ: 精神疾患万成病院

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