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満床近づく軽症、中等症用ベッド 県内「第6波」収束見通せず

新型コロナウイルスの中等症用病床で患者をケアする倉敷中央病院の看護師=8日(同病院提供、画像の一部を加工しています)

 新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株による流行「第6波」の影響で、岡山県内ではコロナ患者向け病床のうち、軽症、中等症用ベッドが埋まりつつある。15日時点の病床使用率は軽症、中等症用(486床)が60・1%、重症用(68床)が20・6%で、前週よりそれぞれ悪化。全体の病床使用率が8割を超え、県内の医療提供体制が限界に近づいた昨年4~6月の「第4波」ほどではないが、今回の波でも高齢者に感染が拡大。基礎疾患がある感染者の入院が増え、県内の医療機関では多くの人手を振り向けざるを得ない状況になっている。

 重症用が12床、中等症用が16床ある倉敷中央病院(倉敷市)。中等症用は14日以降、満床に近い状態が続く。

 「コロナと別の疾患を同時に治療できる病院は限られる」(臨床検査・感染症科の橋本徹主任部長)ことから、コロナ感染を機に持病が悪化した患者が集中。同病院では循環器系の疾患や生活習慣病がある高齢者が目立ち、複数の専門医が連携して診療に当たる。

 心筋梗塞などが原因で入院する患者が増えるこの時季。加えて、コロナに感染または濃厚接触者となり、出勤できないスタッフが病院全体で約50人おり、不急の外来診療や外科手術を制限して急場をしのぐ。

 「コロナ担当のスタッフだけでなく、病院全体の負担が増している。『第4波』と同様、非常にタイトな状況」と橋本主任部長。

 県内で感染者が急増し、第6波が到来したとみられるのは1月初旬。当初は若い世代が中心だったが、同下旬から高齢者も増え始めた。同19日時点で6・9%だった全感染者に占める60代以上の割合は、2月16日時点で17・0%まで上昇。オミクロン株の感染力の強さと家庭内での感染の増加が原因とみられる。

 ただ、昨年の第4波と大きく異なるのが、コロナ病床の埋まり方。第4波は重症化しやすい変異株・アルファ株が主流で、重症用がまず満床となり、入院を受け入れる医療機関ではマンパワーが不足するなどし、深刻な状況に追い込まれた。これに対し、第6波は軽症、中等症用が先に満床に近づく構図となっている。

 岡山市立市民病院(岡山市)でも、コロナで持病が悪化した高齢者の入院が増加。28床(重症用4床、中等症用24床)のコロナ病床は22日時点で十数床が埋まる。コロナが治っても他の医療機関への転院が思うように進まない上、院内の一般病床に余裕はなく、コロナ病床で療養を続ける患者は少なくないという。

 国立病院機構南岡山医療センター(同県早島町)のベッドは軽症、中等症用が計10床。症状は軽いが、基礎疾患があるなど重症化リスクが高い感染者に入院してもらって中和抗体薬を投与、2日ほどで退院してもらう態勢を敷く。

 今年に入り、2月20日までに入院したコロナ患者は28人。入れ替わりが早いことから、症状の把握や適切な治療法の選択、入退院の手続きといった業務に追われているという。谷本安院長は「コロナの入院患者は第4波より3割ほど増えている。発熱外来やコロナのワクチン接種もあり、スタッフにかかる負担は重い」と説明する。

 県内での1日当たりの新規感染者数は2月11日から千人を下回るものの、高止まりが続き、第6波の収束は見通せない。病床使用率が第4波の水準に近づいた場合、県は中和抗体薬の投与や飲み薬の処方に協力してもらう医療機関を増やすことを検討する方針だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年02月22日 更新)

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