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(8)院内対応~いつもの日常を大切に~ 万成病院看護副部長 石丸信一

患者さんの作品が飾られた病室

こいのぼりが泳ぐ病棟

プランターで育てたタマネギを収穫する患者さん

石丸信一氏

 ■入院治療における新型コロナウイルス感染症

 これまで「精神科医療からの町づくり コロナ禍での取り組み」では、精神科医療を通した当院の地域へのかかわりについて連載してきました。今回は、精神科病院として、入院医療におけるコロナ禍での取り組みについてお伝えしたいと思います。

 2019年に発生した新型コロナ感染症はいまだに収束することなく続いています。国民生活はもちろんのこと、医療においても連日報道されているように病床の逼迫(ひっぱく)など大きな問題を抱えています。人と人との交流、接触、対面での会話が避けるべきものに変わり、医療、看護、介護の在り方が大きく変わったのも事実です。

 万成病院も同様に新型コロナによりこれまで普通に行われていたことができなくなり、その影響は患者さん、ご家族にも及んでいるのが現状です。

 ■いつもの日常を大切に

 「ちょっとでいいから、家に帰らせて。息子が下に迎えに来とんよ。すぐに帰ってくるから」

 認知症により入院された患者さんにとっては、コロナウイルスによる感染が拡大していても、理解することが難しく、病棟の中では普段と同じ日常の空気が流れています。

 外にも出られない、家族とも会えないという非日常があり、その中での不安や混乱は大きいものがあります。しかし、認知症の患者さんにかかわるスタッフは、この普段と変わらない日常を守らなければならないという思いを持ってかかわっています。

 ボランティアの受け入れや夏祭り、クリスマス会など病院全体を挙げて行ってきた行事の中止や初詣、花見など、季節の移ろいを感じる活動や外出、外泊の制限、施設見学ができないなど退院に向けての支援がこれまでどおりにはいかなくなった状況は今も続いています。

 そういった状況の中でも、季節を感じていただけるような環境の工夫や病棟ごとの活動、できる限り対面での面会をしていただけるような配慮、ご家族に担当スタッフから病棟内での生活の様子をお知らせするなどの対応を行い、患者さん、ご家族が安全で安心できる療養環境と医療サービスの提供を行っています。

 ■出口の見えない中で

 まだまだコロナ禍での日常は続きます。病院内においてもコロナ感染による集団感染(クラスター)を決して起こしてはいけないという思いをもって、私たち医療従事者は日々の医療に携わっています。新型コロナウイルスを正しく理解し、患者さん、ご家族が安心、安全に医療が受けられるよう今後も取り組んでいきたいと思います。

     ◇

 万成病院(086―252―2261)。連載は今回で終わりです。

 いしまる・しんいち 高校卒業後、1989年に万成病院入り。勤務の傍ら、岡山看護専門学校に学び、94年に卒業。2017年から現職。介護支援専門員、認知症キャラバンメイト。兵庫県出身。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年06月20日 更新)

タグ: 精神疾患万成病院

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