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(2)PSAってご存じですか? 岡山ろうさい病院泌尿器科医師 川合裕也

川合裕也氏

 「PSAってご存じですか?」

 泌尿器科外来を受診する方の中にも知らないと答える方が多いです。

 PSAとは前立腺特異抗原(prostate specific antigen)の略で、前立腺から分泌される酵素です。血液検査で測定することができ、前立腺肥大症や前立腺炎などの良性疾患でも上昇しますが、前立腺がんで上昇することで有名です。

 「がん」と言うと、健康管理において皆さん心配になりますよね。

 胃がんや大腸がん検診で内視鏡を受けたり、肺がん検診でのレントゲン撮影などはイメージを持ちやすいと思います。実は前立腺がん検診に用いるのがこのPSAです。血液で測定できるので、胃カメラよりも気軽に受けられますが、認知度はまだまだ低いように感じます。

 ■前立腺とは

 前立腺は男性の膀胱(ぼうこう)の出口にあって、尿道をとりまいているクルミ大の臓器です。前立腺液を分泌し、精子を保護する役割を担います。つまり、前立腺は男性の生殖機能に重要な関わりをもつ臓器です。

 ■PSAが高いと言われたら

 「PSAが少し高いって言われたけど、症状も無いし、これまで受診していませんでした」。時々こういった声を耳にします。

 多くのがんは初期の段階で症状を認めません。前立腺がんは進行がゆっくりながんですが、2020年のデータでは約1万3千人の方が前立腺がんで命を落としており、決して放置できる病気ではありません。PSAが高い場合には必ず泌尿器科で診察を受けましょう。

 ■どんな検査をするの?

 まずは尿検査と超音波検査を行います。次にMRI検査を行うと、より詳しい情報が得られます。

 ■前立腺針生検

 MRIで前立腺がんの疑いがあった場合、肛門から細い超音波器具を挿入し、針を刺して小さな組織片を採取する生検を行います。当院では痛みのない全身麻酔で行うため、安心して検査を受けていただけます。採取した組織は専門の病理医が観察し、がんを診断します。

 ■前立腺がんの治療

 前立腺がんと診断されたら、CT検査などでがんの広がり(ステージ)を確認します。患者背景(内科的合併症や排尿障害の有無、年齢など)やステージに応じて手術・放射線・薬物治療の選択肢を一緒に相談していきましょう。また最近では悪性度が低く小範囲の前立腺がんに対して、無理な治療を行わず経過観察を行う方法(監視療法)もあります。

 ■50歳を過ぎたらPSAを測りましょう

 無症状でもまずは一度PSAを測ってみて、異常があれば気軽に泌尿器科で相談してください。



 岡山ろうさい病院(086―262―0131)

 かわごう・ゆうや 富山県立高岡高等学校、岡山大学医学部卒。岡山大学附属病院泌尿器科学教室入局。倉敷成人病センターを経て、2022年より岡山労災病院勤務。

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年09月05日 更新)

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