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(4)お薬の価格(薬価)はどうやって決められているのか 田中雄太
皆さまは、スーパーでお肉や野菜、日用品を買うときには価格を見てから買うと思いますが、病院や薬局でお薬をもらう際に、一つ一つのお薬の価格について気にされた経験はありますか?
また、医師、薬剤師から「先発医薬品を後発医薬品(ジェネリック医薬品)に切り替えると、お薬代を抑えることができますけど、どうされますか?」と聞かれたことが一度はあるのではないでしょうか。
しかしながらお薬の価格や、その価格はどのようにして決められているのか、詳しくご存じでない方もおられるのではないでしょうか。そこで今回は、病院や薬局でもらうお薬の価格について説明させていただきます。
■類似薬効比較方式
薬が作られる過程を説明した前回のコラムでは、細胞・動物を用いた非臨床試験にて候補薬剤を選別し、患者さんを対象とした臨床試験(治験)で集められた有効性及び安全性のデータを基に規制当局が審査、承認するところまで紹介させていただきました。
承認されたらすぐに世の中に流通するかというとそうではなく、その医薬品を保険収載するかどうか(保険診療の枠組みの中で使用できる医薬品とするかどうか)、保険収載される場合には公定価格(「薬価」)が決められて初めて患者さんのもとに届けられます。
具体的な薬価の決め方については、「類似薬効比較方式」という既に承認されている医薬品の中で、対象疾患、作用機序、投与経路等が最も類似している医薬品と比較して薬価を決定する方法が採用されています。新規性が高い医薬品は、さまざまな加算が上乗せされることにより、画期的な医薬品を開発する製薬会社に対してインセンティブが与えられています。
■原価計算方式
では、もし比較する医薬品がない場合にはどうなるのでしょうか。そのような場合には、医薬品の製造にかかる原材料費、製造費等を勘案し薬価を定める「原価計算方式」が採用されます。がん治療を大きく変えた免疫チェックポイント阻害薬の中でも、本邦で最初に承認されたニボルマブ(商品名オプジーボ)は、「原価計算方式」にて薬価が定められました。
また、近年では細胞治療や遺伝子治療など、これまでの医薬品とは作用機序、有効性が大きく異なる再生医療等製品も上市されており、その画期性や有効性もさることながら薬価が非常に高額であることもあわせて報道されているのを耳にされたこともあるのではないでしょうか。再生医療等製品をはじめ高額な医薬品についても、基本的には上述の薬価の決め方に基づき設定されています。
■ジェネリック
最後に、後発医薬品(ジェネリック医薬)については、先発医薬品の薬価に0・5を乗じた額を薬価とする方法が一般的となっております。後発医薬品の銘柄数が10を超える場合には0・4を乗じた額が薬価とされます。
医薬品は私たちの生活にとって必要不可欠なものであり、特に医薬品の価格は患者さん、製薬企業双方において大事なものです。
今回は、制度の詳細な説明は省かせていただきますが、やみくもに決められているのではなくルールに基づいて薬価が決められていることを分かっていただけたらと思います。
たなか・ゆうた 熊本大学薬学部卒。同大学大学院薬学教育部博士後期課程修了。2014年、岡山大学病院薬剤部入職。19~21年独立行政法人医薬品医療機器総合機構に出向。岡山大学病院薬剤部試験研究室室長。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
また、医師、薬剤師から「先発医薬品を後発医薬品(ジェネリック医薬品)に切り替えると、お薬代を抑えることができますけど、どうされますか?」と聞かれたことが一度はあるのではないでしょうか。
しかしながらお薬の価格や、その価格はどのようにして決められているのか、詳しくご存じでない方もおられるのではないでしょうか。そこで今回は、病院や薬局でもらうお薬の価格について説明させていただきます。
■類似薬効比較方式
薬が作られる過程を説明した前回のコラムでは、細胞・動物を用いた非臨床試験にて候補薬剤を選別し、患者さんを対象とした臨床試験(治験)で集められた有効性及び安全性のデータを基に規制当局が審査、承認するところまで紹介させていただきました。
承認されたらすぐに世の中に流通するかというとそうではなく、その医薬品を保険収載するかどうか(保険診療の枠組みの中で使用できる医薬品とするかどうか)、保険収載される場合には公定価格(「薬価」)が決められて初めて患者さんのもとに届けられます。
具体的な薬価の決め方については、「類似薬効比較方式」という既に承認されている医薬品の中で、対象疾患、作用機序、投与経路等が最も類似している医薬品と比較して薬価を決定する方法が採用されています。新規性が高い医薬品は、さまざまな加算が上乗せされることにより、画期的な医薬品を開発する製薬会社に対してインセンティブが与えられています。
■原価計算方式
では、もし比較する医薬品がない場合にはどうなるのでしょうか。そのような場合には、医薬品の製造にかかる原材料費、製造費等を勘案し薬価を定める「原価計算方式」が採用されます。がん治療を大きく変えた免疫チェックポイント阻害薬の中でも、本邦で最初に承認されたニボルマブ(商品名オプジーボ)は、「原価計算方式」にて薬価が定められました。
また、近年では細胞治療や遺伝子治療など、これまでの医薬品とは作用機序、有効性が大きく異なる再生医療等製品も上市されており、その画期性や有効性もさることながら薬価が非常に高額であることもあわせて報道されているのを耳にされたこともあるのではないでしょうか。再生医療等製品をはじめ高額な医薬品についても、基本的には上述の薬価の決め方に基づき設定されています。
■ジェネリック
最後に、後発医薬品(ジェネリック医薬)については、先発医薬品の薬価に0・5を乗じた額を薬価とする方法が一般的となっております。後発医薬品の銘柄数が10を超える場合には0・4を乗じた額が薬価とされます。
医薬品は私たちの生活にとって必要不可欠なものであり、特に医薬品の価格は患者さん、製薬企業双方において大事なものです。
今回は、制度の詳細な説明は省かせていただきますが、やみくもに決められているのではなくルールに基づいて薬価が決められていることを分かっていただけたらと思います。
たなか・ゆうた 熊本大学薬学部卒。同大学大学院薬学教育部博士後期課程修了。2014年、岡山大学病院薬剤部入職。19~21年独立行政法人医薬品医療機器総合機構に出向。岡山大学病院薬剤部試験研究室室長。
(2022年12月05日 更新)
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岡山大学病院