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アナフィラキシー関与物質を確認 岡山大グループ、新治療法へ道筋

西堀正洋特任・特命教授

 岡山大の西堀正洋特任・特命教授(創薬薬理学)らのグループは、重いアレルギー反応・アナフィラキシーの発症に、血管内側を覆う内皮細胞にあるタンパク質「HMGB1」が関与していることを、ラットによる研究で確認した。ハチに刺されるなどした場合、HMGB1が血管内皮から血液中に放出され、炎症が増幅する仕組み。アナフィラキシーによるショック状態を早期に収束させる治療法の開発につながる成果という。

 グループのこれまでの研究で、HMGB1は内皮の中ではDNAの修復などを担っているが、外部に放出されると炎症の原因になることが分かっている。

 西堀特任・特命教授らは第1段階として、人間の血管内皮細胞を培養し、ヒスタミンを投与する実験を実施。ヒスタミンの濃度が高いほど、多くのHMGB1が放出されていることを確認した。

 続いて、アナフィラキシーを発症させて血圧低下が始まったラット18匹を3グループに分け、(1)HMGB1の働きを抑える抗体(2)無関係の抗体(3)生理食塩水―を投与。血圧の変化と、血管内皮から放出されたHMGB1の量を測定した。

 (2)(3)のグループは、HMGB1量が発症前の4、5倍に達し、血圧も低下し続けて重篤な状態に。一方、(1)は1・5倍程度の量にとどまり、血圧も正常な数値まで回復した。これらの結果から、グループは放出されたHMGB1が炎症を増幅させる原因になっていると結論付けた。

 アナフィラキシーは、血圧の急激な低下を抑えるため、血管を収縮させるアドレナリンを筋肉に注射して治療する。西堀特任・特命教授は「アドレナリンとHMGB1抗体薬を組み合わせて治療すれば、効果が高まるはずだ。臨床試験に向け、研究を継続していく」としている。

 中国・清華大との共同研究で10月、国際学術誌に掲載された。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2022年12月05日 更新)

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