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(8)肺結核症編 川崎医大総合内科学1教授・川崎医大川崎病院副院長 沖本二郎

おきもと・にろう 広島県立呉三津田高、川崎医大卒。川崎医大呼吸器内科講師、川崎医大川崎病院内科部長などを経て、2011年から現職。内科専門医、呼吸器専門医、結核専門医。医学博士。

 肺結核は、かつて国民病、亡国病として恐れられ、昭和25年までは、1年間に17万人以上の人が亡くなり、日本の死因の第1位でした。沖田総司、高杉晋作、正岡子規、石川啄木らが、この病気で亡くなっています。しかし、現在でも、1年間に2200人以上の人が亡くなり、忘れてはならない病気です。

結核の感染と発症

 結核の排菌者(喀痰中に結核菌が認められる場合)は、咳(せき)とともに結核菌を周囲に喀出(かくしゅつ)します。この結核菌を、周囲にいた人が吸入することにより、感染が起こります。結核菌を吸入して感染を受けた人が、体力が落ちていたり、糖尿病・胃切除後・珪肺(けいはい)・透析・悪性腫瘍・ステロイド療法中であった場合には、結核を発症する場合があります。

症状

 (1)2週間以上続く咳、痰などの呼吸器症状(2)血痰、胸痛(3)発熱、寝汗、食欲不振、倦怠(けんたい)感などの全身症状(4)高齢者では体重減少=図1参照。以上のような症状があれば、病院を受診し、胸部レントゲンや喀痰検査を受けましょう。

診断

 (1)胸部レントゲンおよび胸部CT(コンピューター断層撮影)

 結核は、図2のレントゲンやCTのように、進行すると空洞をつくります。このような状態になれば、血痰が出たり、喀痰中に結核菌を排菌するようになり、他人へ感染させる源となります。

 (2)喀痰検査

 喀痰から結核菌が証明されれば、結核との診断が確定します=図3参照。結核菌の菌量が少ない場合は、喀痰の培養を行うと、結核菌が、証明される場合もあります。

治療

 リファンピシン(RFP)イソニコチン酸ヒドラジド(INH)ピラジナマイド(PZA)にエタンブトール(EB)またはストレプトマイシン(SM)を加えた4剤で、6カ月間の治療を行います=図4参照

予防

 BCG(弱毒化された生きたウシ型結核菌)を、生後6カ月に達するまでに行います。結核性髄膜炎や粟粒ぞくりゅう結核などの重症結核に高い有効性を認め、肺結核は50%発症率が低くなります。

結核患者と接触した場合

 最近、クオンティフェロンという検査が行われるようになりました。これは、結核菌による感染を受けると、陽性になるものです。もし、陽性になれば、結核発症予防のために、イソニコチン酸ヒドラジドを6カ月間内服します。

最後に

 まさか私が結核にと思わず、早めに受診してください。いまだに結核は世界一の伝染病です。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年08月20日 更新)

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