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(1)緩和ケア 倉敷成人病センター病院長 梅川康弘

梅川康弘氏

 緩和ケアに対し、「病気の末期に痛みや苦痛を和らげるケア」というイメージを抱いている方は少なくないのではないでしょうか。

 世界保健機関(WHO)は緩和ケアについて、

 「生命を脅かす病気によって生じるあらゆる問題に直面している患者とそのご家族に対し、早期から適切なケアを行うことでクオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチ」

 と定義しています。したがって、病気の進行にかかわらず何かしらの問題を抱えていらっしゃる場合、例えば、痛みやだるさなど身体的な問題、気分の落ち込みなどの精神的な問題、経済的な不安などの問題も含まれます。がんだけでなく呼吸不全、心不全の患者さんも対象になります。

 緩和ケアでは、患者さんが苦痛と感じている各症状を取り除く治療や処置を行います。病気が診断された時点からすでに何らかの困りごとがあれば、緩和ケアを開始しますし、病気の進行にかかわらず、その後も治療と並行して行います。つまり、外来(通院)と入院、在宅のどの段階でも受けることができます。

 緩和ケア外来では、痛みやだるさなど身体症状のコントロールや、生活のなかでの困りごとなどがないかを一緒に考え、それぞれの問題を克服するための処方やケアを行います。緩和ケア病棟では、入院患者さんひとりひとりの苦痛を和らげるために、どのようなことができるのかを考えて、個別化した医療とケアを提供します。

 いずれの場合も、さまざまな専門家が集まってチーム(主に緩和ケア担当医師を中心に、がん専門の看護師や薬剤師、管理栄養士、セラピスト、ソーシャルワーカーなど)として対応します。

 当院の緩和ケア病棟は、がん患者さんとご家族が身体や心のつらさを和らげ、その人らしく穏やかな毎日を過ごすことができるように2022年2月に開設しました。

 毎日、患者さんの状態や今後の方針を共有するカンファレンスを実施し、それぞれのスタッフが専門性を生かしながら、患者さんやご家族への最適なケアを具体的に検討しています。例えば、一日一日を大切に過ごしていただくために薬剤や環境などを調整して昼間は平静に、夜はきちんと寝られる生活リズムをつくるようサポートします。

 14床の病室はすべて個室(室料差額は無料)です。感染対策を行った上で面会制限は設けず、いつでもご家族と会うことができます。家族浴室や機械浴室=写真1=のほか、ご家族が患者さんのために手料理を振る舞って、一緒に食事をすることができる食堂・談話室=写真2=も備え、多目的スペースとしてもご利用いただけます。付き添いのご家族の方は、家族控室でゆっくりお休みいただけます。

 当院に受診中の患者さんだけではなく、他院通院中の患者さんもご相談をお受けいたしますので、緩和ケア外来にお問い合わせください。

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 倉敷成人病センター(086―422―2111)

 うめかわ・やすひろ 津山高校、島根医科大学医学部卒業。同大学附属病院、興生総合病院(三原市)を経て1995年から倉敷成人病センター内科に勤務。内科部長、副院長、倉敷成人病クリニック院長を歴任し、2019年6月から倉敷成人病センター病院長。専門は総合内科、消化器疾患、肝疾患、感染症。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医など。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年02月20日 更新)

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