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(5)子宮筋腫や卵巣のう腫の新しい治療の選択肢~おなかに傷がない経腟的内視鏡手術~ 倉敷成人病センター理事長兼ロボット先端手術センター長 安藤正明

安藤正明氏

 ■子宮筋腫とは

 子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍(しこり)です。成人女性の2~4割にみられるとされており、30~40代に発症することが多い病気です。女性ホルモンの分泌が減少する閉経後には筋腫は小さくなります。筋腫は一つだけではなく複数個できることも多く、大きさやできる部位によって症状が異なります。

 代表的な症状は月経痛が増強したり、月経量が増えたりします。月経量が増えると貧血になるため、貧血の原因を探っているときに子宮筋腫が見つかることがあります。

 その他、筋腫のできる部位によって腰痛や便秘、頻尿になったり、不妊症の原因になることもあります。

 ■卵巣のう腫とは

 卵巣のう腫は、卵巣から発生する腫瘍の一種で、卵巣の中に液体の入った袋状の病変を形成するものです。袋の中の液体成分の違いによってさまざまな種類に分けられます。

 卵巣のう腫の多くは良性で、無症状のまま健康診断や妊娠の時に偶然発見されることが多くありますが、卵巣のう腫が大きくなるとねじれたり、破裂したりすることにより、急激な腹痛が出現し、緊急手術が必要になる場合もあります。

 代表的な症状は、小さいうちは無症状で経過することが多いですが、大きくなるにつれて、腹部の違和感や膨満感、下腹部痛、頻尿などを自覚することがあります。

 ■新たな選択肢

 子宮筋腫も卵巣のう腫も大きさや症状によっては積極的な治療(手術)が必要になります。

 昨今では、傷の小さな腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術(ロボット支援下手術含む)が増加してきていますが、当院ではおなかに傷がない経腟(ちつ)的内視鏡手術(vNOTES)による手術も積極的に実施しています。

 vNOTESとは、おなかに傷が一つもない腹腔鏡下手術で、腹腔鏡のカメラや鉗子(かんし)など全てを腟から挿入し、摘出組織も腟から取り出す術式になります。

 今までの腹腔鏡下手術では、腹部に3~4カ所、5~10ミリ程度の切開を入れ、そこからカメラや鉗子などの器具を挿入し手術を行っていました。vNOTESは腹腔鏡下手術よりさらに低侵襲となり、おなかに傷を作らず手術できるため、術後の痛みが軽く、手術合併症も軽減され、早期社会復帰が可能です。

 当院ではvNOTESを2019年2月から行っています。全ての患者さんが対象になるわけではありませんが、従来の開腹手術や通常の腹腔鏡下手術でしかできなかった子宮筋腫や卵巣のう腫の手術も、vNOTESで行えるものが増えてきています。

 詳しくは、当院婦人科外来までお問い合わせください。

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 倉敷成人病センター(086―422―2111)

 あんどう・まさあき 岡山朝日高校、自治医科大学医学部卒業。1986年より倉敷成人病センター勤務。2019年より現職。日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本婦人科腫瘍学会専門医・指導医、日本内視鏡外科学会技術認定医(産科婦人科)、日本ロボット外科学会国際A級ライセンスなど。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年04月20日 更新)

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