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(6)アトピー性皮膚炎治療の3本柱 笠岡第一病院皮膚科医師 水野佳寿子
アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚の病気です。患者数は年々増加しており、アレルギー疾患の発症にも大きく関係していることがわかってきています。
治療の基本は「スキンケア」「薬物治療」「悪化因子への対策」で、治療を行う上でこの三つの要素すべてが必要です。
■スキンケア
アトピー性皮膚炎の患者さんの肌は、本来皮膚が持つバリア機能(外界からのさまざまな刺激や乾燥などから体の内部を保護する機能)が弱くなり、アレルゲンが侵入しやすい状態になっています。そのため、皮膚を清潔に保ち、潤いのある状態にするよう、しっかりと保湿をしてバリア機能を安定させることが大事になってきます。
治療によってかゆみや湿疹が落ち着いても、保湿はきちんと毎日続けましょう。また皮脂を取り過ぎるのも良くないので、ナイロンタオルなどでごしごし洗うのは避け、洗浄剤をよく泡立てて手で洗うようにしましょう。
■薬物治療
治療の基本となるのはステロイド外用薬で、皮膚の炎症を抑える目的で使用します。湿疹の程度や部位によって強さの異なるステロイド剤を使い分けて塗ります=外用のポイント参照。
ステロイド外用薬以外にもタクロリムス軟膏(なんこう)、デルゴシチニブ軟膏、昨年からはジファミラスト軟膏が新たに使用可能となり、選択肢も増えています。
このような塗り薬でもよくならない重症例や慢性化した症例に対しては、注射薬や飲み薬による治療が近年行えるようになりました。当院でも中等症以上の患者さんに対して注射薬による治療を導入しています。2週間ごとに自分で注射を行い、症状が落ち着けば保湿剤等によるスキンケアと自己注射を併用しながら3カ月に1回程度の通院となります。
■悪化因子への対策
症状を悪化させる因子は年齢による違いや個人差がありますが、一般的には汗やダニ、ハウスダスト、カビ、ペットの毛、食べ物、ストレスなどが挙げられます。肌にあわないものは使用しない、こまめに掃除をする、汗をかいたらタオルでその都度拭き取るなど、皮膚にやさしい環境を整えることを意識して対策を行うことで症状の悪化を防ぎましょう。
アトピー性皮膚炎の患者さんの中には、かゆみのせいで眠れない、勉強や仕事に集中できない状態になるなど社会生活に支障をきたしたり、細菌・ウイルスの感染症の合併や、目の周りをこすることで目の疾患を引き起こす場合もあります。かゆみや湿疹で悩んでいる方は、ぜひ専門の医療機関を受診して相談をしてください。
◇
笠岡第一病院(0865―67―0211)
みずの・かずこ 山口大学医学部卒業。岡山大学大学院修了。岡山大学病院、因島総合病院等を経て2017年より現職。日本皮膚科学会専門医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
治療の基本は「スキンケア」「薬物治療」「悪化因子への対策」で、治療を行う上でこの三つの要素すべてが必要です。
■スキンケア
アトピー性皮膚炎の患者さんの肌は、本来皮膚が持つバリア機能(外界からのさまざまな刺激や乾燥などから体の内部を保護する機能)が弱くなり、アレルゲンが侵入しやすい状態になっています。そのため、皮膚を清潔に保ち、潤いのある状態にするよう、しっかりと保湿をしてバリア機能を安定させることが大事になってきます。
治療によってかゆみや湿疹が落ち着いても、保湿はきちんと毎日続けましょう。また皮脂を取り過ぎるのも良くないので、ナイロンタオルなどでごしごし洗うのは避け、洗浄剤をよく泡立てて手で洗うようにしましょう。
■薬物治療
治療の基本となるのはステロイド外用薬で、皮膚の炎症を抑える目的で使用します。湿疹の程度や部位によって強さの異なるステロイド剤を使い分けて塗ります=外用のポイント参照。
ステロイド外用薬以外にもタクロリムス軟膏(なんこう)、デルゴシチニブ軟膏、昨年からはジファミラスト軟膏が新たに使用可能となり、選択肢も増えています。
このような塗り薬でもよくならない重症例や慢性化した症例に対しては、注射薬や飲み薬による治療が近年行えるようになりました。当院でも中等症以上の患者さんに対して注射薬による治療を導入しています。2週間ごとに自分で注射を行い、症状が落ち着けば保湿剤等によるスキンケアと自己注射を併用しながら3カ月に1回程度の通院となります。
■悪化因子への対策
症状を悪化させる因子は年齢による違いや個人差がありますが、一般的には汗やダニ、ハウスダスト、カビ、ペットの毛、食べ物、ストレスなどが挙げられます。肌にあわないものは使用しない、こまめに掃除をする、汗をかいたらタオルでその都度拭き取るなど、皮膚にやさしい環境を整えることを意識して対策を行うことで症状の悪化を防ぎましょう。
アトピー性皮膚炎の患者さんの中には、かゆみのせいで眠れない、勉強や仕事に集中できない状態になるなど社会生活に支障をきたしたり、細菌・ウイルスの感染症の合併や、目の周りをこすることで目の疾患を引き起こす場合もあります。かゆみや湿疹で悩んでいる方は、ぜひ専門の医療機関を受診して相談をしてください。
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笠岡第一病院(0865―67―0211)
みずの・かずこ 山口大学医学部卒業。岡山大学大学院修了。岡山大学病院、因島総合病院等を経て2017年より現職。日本皮膚科学会専門医。
(2023年06月05日 更新)