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(7)課題解決へ向けて 患者・家族と共に考えること~医療ソーシャルワーカーの役割 天和会松田病院地域連携室室長 大森誠人

大森誠人氏

 当院は急性期病院として、一般病床97床を有しており、平均の入院期間は約13日です。限られた入院期間の中で治療に取り組み、少しでも元気を取り戻し退院を目指すことは共通認識だと思います。しかしながら、「退院」と一口に言っても、自宅や介護施設、他病院への転院など、その退院先は患者さんごとにさまざまです。

 「治療は終わったけど、身体的に弱ってしまった」「退院してからの生活に不安がある」「介護保険制度を詳しく知りたいけど、どうしたらよいだろう」といった不安や悩みを抱えながら、退院を勧められた経験をお持ちの方も多いかもしれません。図の通り、病院には多くの職種が配置されており、直接的・間接的に患者さんに関わっています。その中でも「医療ソーシャルワーカー」は患者さん・ご家族(以下相談者)が抱えている、入院中の療養相談・退院後の生活や介護などの不安や思いを幅広く相談できる専門職です。現在では多くの病院で医療ソーシャルワーカーが勤務しています。

 私は、相談者が抱える不安や思いについてお話を伺い、共通の認識を持ち、その解決方法を一緒に考えていくことを大切にしています。相談業務に正解はありません。相談者の個々の課題に対して、より良いと思われる提案を行うことができるよう、さまざまな公的制度や社会資源、社会情勢などを常に理解しておかなければなりません。そういった意味では、相談を受けるたびに自分自身を成長させることができる職種だと思っています。

 また相談者の課題解決は、自院だけで完結できるものではありません。退院先での生活・療養が継続できるよう切れ目のない支援が必要です。前記にて病院内の職種について触れましたが、地域にも官民問わず多くの専門職の方がおられます。相談内容に応じて専門職と協働で課題解決に取り組んでいくことが重要です。

 少し難しく思われたかもしれませんが、よく相談者にお声がけする言葉を一つ紹介します。

 「困りそうな前に相談しよう」

 経験上、困りごとが発生してからでは、対応が後手になりやすいと思います。「困りそうだな…」と感じた時がベストかもしれません。この掲載を機に「医療ソーシャルワーカー」という存在が病院の相談窓口として認知されていくことを願ってやみません。

     ◇

 天和会松田病院(086―422―3550)。連載は今回で終わりです。

 おおもり・まこと 四国学院大学社会福祉学科卒業後、社会福祉士取得。介護老人福祉施設の生活相談員を経て、2003年に医療法人天和会松田病院へケアマネジャーとして入職。12年に医療ソーシャルワーカーへ転属し、19年4月から地域連携室室長。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年10月16日 更新)

タグ: 松田病院

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