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センター診療の充実図る 岡山市立市民病院 今城健二院長

今城健二院長

今春開設したWEBスタジオ「MIRAIE」

ゴルフを楽しむ今城院長=2005年10月、市民病院ゴルフ部の高知合宿

 岡山市立市民病院(岡山市北区北長瀬表町)は、市民の健康を守る専門性の高い医療を提供している。4月に就任した今城健二院長(65)は「市民と地域から頼りにされ、選ばれる病院に」を基本方針に掲げ、全てのスタッフが連携し患者を支えるよう指揮を執っている。

     ◇

 ―病院を円滑に運営するために心がけていることは。

 医療の技術面だけでなく、患者さんへの対応力を上げなければいけないと考えています。仮に冷たい印象を持たれるようでは、最善の医療を尽くしたとはいえません。患者さんの声に真剣に耳を傾け、悩みや困難を解決し、希望をかなえてあげられるように努力することが重要です。スタッフ同士でも職種の垣根を越えて円滑に情報を共有するためにリスペクトし合うことが大切です。

 ―診療体制を充実させています。

 新型コロナウイルスへの対応や救急対応の患者さんの受け入れなど、公立病院としての役割を果たしていると自負しています。今年4月には感染症内科と形成外科を開設しました。昨年8月に設けた内分泌センターは専門医3人が常駐し、外科、脳神経外科、泌尿器科と連携し、甲状腺や下垂体、副腎の疾患に対応しています。内分泌センター以外にも、複数の診療科の協力が必要な分野はセンターを増やして対応しています。

 整形外科の人工関節手術支援ロボットを活用した手術は執刀件数で中四国の先端を走っています。また、麻酔科で週に1度開設しているペインクリニック外来は、ニーズの高まりを踏まえ、独立させることも検討しています。

 ―診療以外ではどのようなサービス向上を図っていますか。

 まず、今年2月から医療費を後払いできるようにしました。後日、クレジットで支払ってもらうのです。領収書も後日発行します。医療費の計算に要する待ち時間がなくなり、患者さんは診察が終わるとすぐに帰れます。

 WEBスタジオも院内に今春開設しました。交流サイト(SNS)や動画投稿サイト・ユーチューブを通じて情報を得る人が増えていることを踏まえ、診療情報の発信機能を強化するのが目的です。名称は「MIRAIE(ミライエ)」としました。「未来へ向けて発信する」「全職員が未来を見ながら仕事をする」という意味を込めました。診療所との病診連携における研修会場としても利用しています。

 ―公的病院の使命をどう考えていますか。

 市民病院の使命は、救急、災害医療、人材教育の三本柱だと考えています。加えて、民間病院などが引き受けにくいセーフティネットの役割を堅持しなければなりません。新型コロナウイルス禍には率先して入院治療が必要な中等症・重症の患者さんを受け入れてきました。

 一方で、岡山市を中心とする県南東部医療圏は大規模病院が多いため、病院独自の特徴をさらに打ち出していく必要があります。先ほど申し上げた人工関節手術に加え、血液疾患、脳卒中などの治療は当院の強みです。血液疾患では高機能のバイオクリーンルームを10床設け、万全の体制を敷いています。

 新型コロナウイルスへの対応として、隔離病室からウイルスが漏れないように病棟を改修しました。コロナ以外の感染症が流行した場合もこの病棟を活用できると思います。進行性の感染症、薬剤耐性といった今日的な課題に対し、政令指定都市の公的病院間で情報共有にも努めています。

 ―少子高齢化が進む中、国は急性期の病床数がいずれ過剰になると指摘しています。地域医療構想にどう対応していきますか。

 新型コロナウイルスの流行でストップしていた地域医療構想の議論が復活しました。国は急性期病床の削減を目指していますが、われわれの病院でも満床になって一時的に入院すべき患者さんを全く受け入れられないことが繰り返し起こります。似たような状況にある病院は少なくないと推測され、運用実態に即した議論が必要でしょう。一方で、近い将来、多死社会は必ず訪れます。将来のふさわしい病床数を長期的な視点で考えていくことが重要だと感じています。

■プロフィル

 倉敷市生まれ。倉敷南高の第1期生。1983年に岡山大医学部を卒業し、がん研付属病院(現・がん研有明病院)で、抗がん剤の開発に追われた。血液疾患に限らず、乳がんや肺がん、骨肉腫などあらゆる悪性腫瘍を対象に治験を行った。87年に同大に復帰し92年に岡山市立市民病院へ。2011年から副院長を務めた。専門は造血器腫瘍の化学療法、造血細胞移植。

 成人T細胞白血病を引き起こすウイルスのPCR診断システムを開発し、医学博士号を取得したのは30年以上前のこと。新型コロナウイルス禍、この時の知見を生かし、市民病院と自身が副会長を務める岡山市医師会のPCR診断における検査試薬と検査機器を決定したという。

 趣味はゴルフとドライブ。カーブが連続する山道を楽しみながら岡山県内外に出かけている。お気に入りのBGMはJ―POP。もともと、電子工学の分野に進んでエンジニアになることを夢見ていただけに、気分転換でコンピューターを組み立てることもある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年10月16日 更新)

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