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新型うつ病って何? 万成病院理事長・院長 小林建太郎

 うつ病が急増している。厚生労働省の患者調査では1999年には44万人であったのが、2008年には104万人と2・4倍に増加している。確かに現代はストレス社会であり、またうつ病の啓発も進み軽症のうちに受診する人も増えたのだろうが、この数字は異常である。

 外来を担当していると、うつ状態の人をよく診る。ただ急増している大半は、新型うつ病といわれている。新型うつ病は従来のうつ病に比べ、

 (1)自分の好きな仕事・活動の時は元気

 (2)自責感に乏しく、他罰的傾向にある

 (3)うつ病で休職することに抵抗が少ない

といった特徴があるという。しかし、これらの特徴は典型的なうつ病と神経症や適応障害を鑑別していくポイントに他ならない。

 症状だけを重視する診断基準の隆盛がうつ病の多様化を招き、新しいタイプの抗うつ薬の登場がうつ病の増加に拍車をかけている気がしてならない。新型うつ病は抗うつ薬以上に患者自身が自分を理解し、対人関係を考えていく過程が必要となる。何でもうつ病、午後5時までうつ病ではいけない。治療者も周囲の人たちも、多様化しているうつ病個々への対応が求められている。

 最近、気になることがある。患者を見ない医師が増えていることである。診察室でコンピューターの画面ばかりを見て、患者の顔を見ない。パソコンの入力や 莫大 ( ばくだい ) な情報に目を通すためとはいえ、パソコンだけに向き合っていると患者との信頼関係は育たないし、最大の情報を失ってしまう。

 情報が氾濫する現在、本当に自分に必要な情報を見つけられない人が多い。精神科医療に限らず、相手の表情・身だしなみ・立ち振る舞いは対人関係においては最重要な情報だろう。

(2012年12月13日付山陽新聞夕刊「一日一題」)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年12月13日 更新)

タグ: 万成病院

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