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社会福祉法人旭川荘 神崎晋理事長に聞く 在宅生活支援 さらに充実を

神崎晋氏

温かく質の高い医療福祉サービスを提供している社会福祉法人旭川荘

大きなタイを釣り上げ顔をほころばせる神崎理事長

 80以上に及ぶグループが連携し重症心身障害児・者の先駆的な療育に取り組む社会福祉法人旭川荘(岡山市北区祇園)。6月末に4代目の理事長に就任した神崎晋氏(70)は、福祉先進県岡山のシンボルといわれる法人の伝統を継承するとともに、医療と福祉の融合を推し進め、全ての人が共生できる社会の実現を目指している。

  ◇

 ―理事長としての責務、使命をお聞かせください。

 全ての職員が持てる力を存分に発揮し、専門性を生かせるようするのが私の役割。対話と情報公開を進めるため、2022年度の本部の予算と収支、使途を初めて公開しました。どこにどれだけの予算を充て、どのように運営しているのかを全てのスタッフに知ってもらい、組織の一体感と経営への意識を高めてもらいたいと期待しています。

 ―就任後、法人が運営する岡山、愛媛県の全施設を視察されたそうですね。

 どの施設も真剣に業務に当たってくれていることを改めて実感するとともに、老朽化した施設が多いことも分かりました。同じ場所で改築するのか、あるいはより利便性の高い場所へ移転するのかなど、施設ごとに検討していかねばなりません。建て替えの緊急性や採算性などについて全施設にアンケートをしており、現場の意向を踏まえながら優先順位を決めて対応していきます。

 ―人材育成をどう進めていきますか。

 私どもは高度な専門性を有していると自負していますが、そのことに甘んじていては成長できません。さまざまな分野で先進的な取り組みをしている全国の施設に職員を積極的に派遣し、良いところを吸収してほしいと思っています。岡山県内外から実習生を広く受け入れていますが、さらに充実させ医療と福祉の底上げを図ります。

 ―知的障害や発達障害のある18歳以上の人が大学形式で学ぶ「カレッジ旭川荘」(岡山市東区西大寺浜)が好評だと聞きます。

 4年間で一般教養や就労に向けた専門課程を学び、コミュニケーション能力の向上や、スポーツ、文化活動、研究発表などに取り組んでいます。各学年の定員は10人ですが、これまでに20人が卒業し、ほぼ全員が就職するなど、成果は順調です。障害のある方の学ぶ意欲に応える全国的にも珍しい取り組みで、東京から来ている人もいます。

 ―海外との交流も活発ですね。

 ベトナム、ミャンマーを中心に介護現場での就労を希望する留学生を受け入れています。新たな取り組みとしては、上海在住の発達障害のある日本人の子どものために、現地の教員や保護者に適切な対応を助言するズーム会議を2021年から学校園ごとに行っています。上海とは長年、福祉関係者同士の交流を続けていますが、今後も、障害福祉分野の交流を一緒に企画していく考えです。

 ―「ひらたえがお保育園」(岡山市北区平田)で医療的ケアが必要な子どもを受け入れています。

 人工呼吸器を装着した子を含め医療的ケア児を2人、発達障害のある子を含めると約20人を受け入れています。何らかのハンディのある子どもが定員の2割近くを占めており、ニーズの高さを実感しています。医療的ケア児を診るのに看護師2人を配置していますが、さらに子どもを受け入れようと思えば、看護師の増員が必要です。私どもの施設だけでなく、医療的ケア児らが地元の学校園で学べるよう、看護師の人件費の補助を含め、国が制度を充実させてほしいです。

 ―今後、力を入れる施策は。

 継続的な診療が必要な重症心身障害児・者や医療的ケア児が安心して在宅生活を続けることができるように、療育・医療センター内にチームを設け、医師3人が対応していますが、医師を増員したり、訪問看護ステーションと連携・統合したりしてさらに充実させたいと考えています。

 また、自らを傷付けたり物を壊したりする強度行動障害の方が、入院から施設への入所を経て円滑に地域での生活に移行できるように、県精神科医療センターなどの医療機関や岡山市内の福祉施設と連携して受け入れ態勢を整えているところです。

 地域の課題を積極的に受け止めて「旭川荘に任せよう」と思っていただける組織であり続けたいと思っています。

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 かんざき・すすむ 岡山大学医学部を卒業し、同大病院、国立岩国病院を経て、1999年から20年間、鳥取大学小児科学教授を務めた。2019年に社会福祉法人旭川荘へ。旭川荘療育・医療センター院長、旭川荘副理事長などを歴任し、今年6月に理事長に就任した。

 家庭菜園と釣りが趣味で、野菜、果樹、魚の地産地消を実践している。自宅の庭でキュウリ、トマト、大根、白菜、オリーブ、イチジク、ミカンなどを育てる。しかし、今年、サツマイモだけはイノシシに荒らされてしまったという。釣りは小豆島沖などでタイ、アコウ、メバルの大物を狙う。

 ピント、露光、シャッター速度を自分で合わせるマニュアルカメラを何機も収集している。布でボディーを磨き上げ、「カシャッ」というシャッター音を聞いてこの上ないひとときを過ごす。岡山市出身。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年11月06日 更新)

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