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(3)末期腎不全にならないために 山崎浩子 倉敷スイートホスピタル内科医師 

山崎浩子氏

 慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease、CKD)という言葉を聞いたことがありますか。CKDとは、腎機能(GFR)が正常の60%未満に低下するか、もしくはたんぱく尿など腎臓の障害を示唆する所見が3カ月以上持続する状態です。わが国の統計(2005年)では、1330万人の患者さんがいると考えられ、これは成人の8人に1人に当たります。

 CKDは進行すると末期腎不全に至り、透析や腎移植が必要となります。透析には、血液透析と腹膜透析が含まれますが、どちらの場合も治療や通院に時間をとられ、日常生活に大きな影響が出ます。また、CKDは脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患の発症や死亡の危険が高くなることがわかっています。CKDは初期には自覚症状がほとんどありません。夜間頻尿やむくみ、貧血、倦怠(けんたい)感などの症状がありますが、これらの症状が出てきたときには、すでに病状がかなり進行している場合もあります。

 そして、腎臓はある程度まで悪くなると、治療を行っても元の正常な状態に回復させることは難しいのです。よって、早期にCKDを発見して治療を開始することが大切になります。

 CKDを早期発見するための検査は、尿たんぱくと血清クレアチニン(Cr)です。尿たんぱくは、一般的な試験紙による検査だけではなく、尿たんぱくの定量検査も行います。尿たんぱくが0・15g/gCr以上見られた場合、尿たんぱく陽性となり、量が多ければ多いほど腎機能が悪化していく可能性が高くなります。血清Crは、年齢、性別をもとに腎機能を推定することができます。定期的に尿検査、血液検査を受け、たんぱく尿の有無や腎機能の推移を確認していくことが大切です。

 腎機能はいったん悪くなると、元に戻すのは難しいので、末期腎不全への進行を遅らせることと心筋梗塞などの心血管イベントを予防することがCKD治療の目標となります。つまり生活習慣の改善が重要となります。メタボリックシンドロームはCKD進行の危険因子となりますので、肥満の是正や減塩、適度な運動を心がけましょう。たばこを吸っている方は、禁煙も有効です。

 糖尿病や高血圧がある場合は、医療機関を受診してきちんと治療をしましょう。糖尿病や高血圧の薬の中には腎臓を保護する作用を持つ薬もあり、腎機能の悪化を遅らせる効果が報告されています。ただ、腎機能があまりにも悪いと使用できないので、治療についてはかかりつけの先生とよく相談してください。

 繰り返しになりますが、末期腎不全にならないためにもCKDは早期発見が大切です。持病がない方は定期的に健診を受けましょう。また、むくみなど気になる症状があれば、医療機関を早めに受診してください。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 やまさき・ひろこ 岡山大学医学部卒。岡山大学病院、高梁中央病院、国立病院機構岡山医療センターを経て2019年4月から倉敷スイートホスピタル勤務。医学博士。日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア指導医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2023年12月04日 更新)

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