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(7)地域包括ケアシステム 倉敷スイートホスピタル地域ケアセンター長・運営企画室課長 新名早希子

新名早希子氏

 厚生労働省の調査(2022年)によると、家庭の中に65歳以上の高齢者のいる世帯構造は「単独世帯」が51・6%、「夫婦のみ世帯」が44・7%となっています。今後、さらに少子高齢化が進行すると予測されており、支え手も少なくなる中、家族のみで医療や介護が必要となった時に生活を支えることは困難なことが多く、必要なサービスを必要な時期に利用することが大切になります。

 このような背景の下、厚生労働省は、可能な限り住み慣れた地域で要介護状態になっても自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、それぞれの地域の実情に合った住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に行われる「地域包括ケアシステム」の実現を目指しています。ここでいう地域とは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される中学校区域程度を想定されています。

 住み慣れた地域で暮らす場所は自宅だけではなく、住まいとしての施設も多くあります。医療や介護が必要な状態になっても、住まいでどのような「すまい方」をしたいかが大切であり、そのためには「本人と家族の選択と心構え」が必要です。どう暮らしたいかの選択に応じた生活支援や福祉サービスが提供されることで安定して暮らすことができ、医療や看護、介護、リハビリテーションなどのサービスが提供されます=

 国は、地域の中で必要なサービスを柔軟に提供できるよう、医療、介護、障害サービスの連携をより密に行えるような仕組みづくりにも力を入れています。いつまでも自分らしく暮らすためには、普段からもしもの時にどうしたいか、ご家族に自分の思いを伝えておくことも大切となります。

 誰でも、いつでも、大きな病気やけがをする可能性があり、「もしもの時」に約70%の方が医療やケアの選択を自分で決めたり、人に伝えたりすることができなくなると言われています。だからこそ、まずは自分が何を大切にしたいのか、何が嫌なことなのかを意識することから始めてみましょう。

 また、地域の中でどのような住まいの場所やサービスがあるかに興味を持ち、知っておくこともよいと思います。多くの医療機関には、安心して療養できるよう、疾病や障害による心理的、社会的、経済的な課題についての相談援助を行う医療ソーシャルワーカーという職種が配置されています。さまざまなサービスとの連携や今後どうしていきたいという思いを聞きながらサポートを行っていますので、お困りのことがあればぜひ相談してみてください。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 しんみょう・さきこ 愛媛県立八幡浜高校、川崎医療福祉大学卒業。社会福祉士。倉敷廣済病院を経て2012年から倉敷スイートホスピタル勤務。19年に地域ケアセンター長となり、21年から運営企画室課長兼任。医療ソーシャルワーカー。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2024年02月19日 更新)

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