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(1)女性が生き生きとした人生を楽しむためのコツ 倉敷平成病院婦人科部長 植田敏弘

植田敏弘氏

 女性において世界一の長寿国である日本では、もっともっと女性が社会進出しやすい社会を創造して、平均寿命のみならず健康寿命も延伸していくことが大切だと思っています。その際に、約40年間にわたり生理を経験する現代女性にとっては、女性ホルモンといかに上手に付き合うかということが非常に重要になってきます。例えば、思春期以降の生理不順や生理痛には心身の不調のみならず学業(欠席回数増加から成績不振まで)や社会経済(2013年には6千億円超の損失の試算も)にまで負の影響があることが分かっています。

 また、更年期周辺からの女性特有の心身の変化は、ホットフラッシュのような血管運動神経症状から頭痛、めまい、疲労などの身体症状、不眠、抑うつなどの精神症状まで非常に多彩です。この時期には、ホルモン依存性の病気(子宮体がんや卵巣がん)も増えてきますので用心しなければいけません。

 今回はまず、更年期のホルモン療法に絞って解説します。ホルモン療法とは、目的とするホルモンの活性(そのホルモンの持つ働きや体への作用の量)を調節することで治療します。主には、エストロゲン(E)、プロゲステロン(P)などの女性ホルモンや受容体作動薬(女性ホルモンが働く場所を選択して効果を表す薬)を用います。女性の心身は複雑で多様性がありますから、治療する目的によって効果を表したり、また副作用を表したりする量がおのおの異なっています。

 そこで、私が提案する更年期女性が女性ホルモンと上手に付き合うコツ(1)はSMIなどを参考にして、まずご自身の体調の変化に気づいていただくことです(気づき)=図1。そして、もし気づきがあったら、コツ(2)迷わず婦人科専門医を受診して、相談することです。閉経前の方にはEP両方の周期的投与法(周期的にEを飲みながらPを飲むことで生理様の出血を伴う方法)を、閉経後の方には連続投与法(より少量のEPを連続的に投与する方法)を選択します。子宮摘出後の方にはEのみの投与です。また、症例によってはTSECと呼ばれるEと受容体作動薬を用いてデメリットを軽減する場合もあります=図2

 コツ(3)は子宮がん検診や乳がん検診など定期的な健康チェックを併用することです。リスクを最小限に抑えることができます。コツ(4)は適度な運動やバランスのとれた食事、禁煙などの生活習慣を維持することです。ホルモン補充療法のメリットを最大限に引き出すことができるようになります=図3

 いかがでしょうか? 思い当たることはありませんか? 私たち婦人科スタッフ一同、対象の方々が婦人科を受診される際の敷居をできるだけ低くすべく努力しています。晴れの国の女性がホルモンと上手にお付き合いして、生き生きとした人生を送るサポートをさせていただければと思います。

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倉敷平成病院(086―427―1111)

 うえだ・としひろ 香川県立高松高校、徳島大学医学部卒業。同大学院修了後、小松島日赤病院産婦人科(現徳島赤十字病院)、香川県立津田病院産婦人科、宝塚市民病院産婦人科、倉敷成人病健診センターを経て、2023年8月に倉敷平成病院婦人科部長に着任。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、検診マンモグラフィ読影認定医、日本医師会認定産業医、乳がん検診超音波検査実施・判定医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2024年03月19日 更新)

タグ: 女性倉敷平成病院

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